2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震は、震源とされる胆振地方中東部を中心に大きな被害をもたらした。また、北海道電力管内のほぼ全域で電力が止まる「ブラックアウト」が発生し、あらためて電力政策の見直しが国民の一大関心事となった。 そんな中、次世代の風力発電に取り組むベンチャーが注目を集めている。それは、単に風車を利用した発電ということではなく、これまで風車をも破壊してしまうほどの暴風雨をもたらす台風を利用した「台風発電」だという。 いったいどのような発電方法で、それは日本のエネルギー政策にどのような影響を与えるだろうか。
垂直軸型マグナス風力発電機は、風が吹く中、モーターで円筒を駆動させてマグナス力を発生させる。台風のような強風下でも、円筒の回転数を調整すれば風車は暴走することがない。しかも垂直軸を採用したことで、強風にも耐えられる強度を確保でき、また、どの方向から吹いてくる風でも発電することを可能となる。これにより、風速・風向が頻繁に変わる日本のような自然環境下でも安定して発電ができ、しかも静音だという。
台風銀座である日本に、アジア諸国が注目
同社は2016年から、1kW試験機を沖縄県南城市に設置し、発電量の変化や耐久性をテストしている。さらに2018年8月からは10kW試験機の実証実験もスタート。2020年以降に量産販売をスタートさせたい、としている。
この垂直軸型マグナス風力発電機は、計算上、秒速70mまで耐えることができるとされ、日本をはじめ台風やハリケーンが多く発生するアジア地域などが主なターゲットだ。すでに30を超える国や地域からの問い合わせがあり、2017年10月にはフィリピン国家電力公社と同国での共同実証に合意している。
同社は2018年に10機程度、2019年に40~50機程度、そして量産が始まる2020年には100機クラスの受注を見込んでいる。これは日本とフィリピンの市場情勢から見込まれている数字だが、世界的に風力発電市場はまだまだ伸び代を持っている。実績が上がれば、この数字もさらに上積みされていくかもしれない。
前述したように、周囲を海に囲まれた日本は風力発電に適した環境にある。
刻々と変化する風向きや風力を柔軟にとらえてエネルギーに変換できる風力発電機が開発され、しかも量産によって設置コストが下がれば、一気に導入に拍車がかかる可能性がある。
いまだ各地の原発再稼働に積極的な意見も多い中、この新しい風力発電が日本のエネルギー政策に大きな影響を与えることになるかもしれない。
≪記事作成ライター:三浦靖史≫
フリーライター・編集者。プロゴルフツアー、高校野球などのスポーツをはじめ、医療・健康、歴史、観光、エンタメなど、幅広いジャンルで取材・執筆活動を展開。好物はジャズ、ウクレレ、落語、自転車などなど。新潟県長岡市在住。
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