2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震は、震源とされる胆振地方中東部を中心に大きな被害をもたらした。また、北海道電力管内のほぼ全域で電力が止まる「ブラックアウト」が発生し、あらためて電力政策の見直しが国民の一大関心事となった。 そんな中、次世代の風力発電に取り組むベンチャーが注目を集めている。それは、単に風車を利用した発電ということではなく、これまで風車をも破壊してしまうほどの暴風雨をもたらす台風を利用した「台風発電」だという。 いったいどのような発電方法で、それは日本のエネルギー政策にどのような影響を与えるだろうか。
《風力発電の課題》
・国内では発電コストが高止まり
世界では、風力発電の発電コストは低下している。しかし、日本では世界平均の約1.6倍となっている
・風車を設置するための調整が大変
環境アセスメントに通常3〜4年の時間がかかる。また、地元の調整などに時間や経費がかかる
こうした点から、風力発電は島国・日本にふさわしい発電方法で、十分な経済性が期待できるものの、現状としては導入に時間がかかったり、発電コストが高止まりしていたりすることが積極導入への足かせとなっているのだ。
台風のパワーで発電できる「プロペラのない風力発電」
なかなか進まない国内の風力発電に、文字通り“新風”を吹き込んでいるのが、ベンチャー企業の株式会社チャレナジー(本社・東京)だ。同社では、風力どころか時に大きな自然災害を引き起こす台風のパワーをエネルギー源とし、そこから電力を生み出そうという「台風発電」プロジェクトを進めている。
日本は、毎年いくつもの台風が接近、あるいは上陸する“台風大国”だ。そうした自然環境下にある日本は、風力発電大国になれるポテンシャルがあると評価される一方で、風の強さや向きが変わりやすく、これまでのプロペラ式風車には厳しい環境と言わざるを得なかった。台風のたびに風車が倒壊するなどの事故もたびたび起こっているのが現実だ。
そこでチャレナジーは、台風でも安全に発電できる「プロペラのない風力発電」の実用化を目指しているのだ。
われわれが海岸などでよく見かける風車は、一般的に普及している「水平軸プロペラ式」の風力発電機。この水平軸プロペラ式だと一方向からの風でまわるだけなので、効率よく安定した発電ができない。また、風があまりに強烈だった場合、暴走や倒壊などの危険性もある。
これに対して同社が開発をめざす「プロペラのない風力発電」は、前者とは全く機構が異なる「垂直軸型マグナス式風力発電機」だ。これは、円筒を気流の中で回転させた時に発生する「マグナス力」を利用し、風車を回転させる仕組み。
マグナス力とは、空気の流れ(風)の中に回転する円筒や球を置くと、流れの方向に対して垂直方向の力(揚力)が発生する現象のこと。野球や卓球などの球技で、球を放つときに回転を加えると、球が曲がったり、あるいは浮き上がったりする。このような変化球は、マグナス効果によって生まれるものなのだが、古くは飛行機を飛ばす揚力を得るために、このマグナス力の研究が進められたという。
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