近年、日銀の金融緩和・マイナス金利政策や、先行きの見えない国内経済の影響を受け、日本円と比べて高利回りの「外貨建て投資」に人気が集まっています。 日銀の資金循環統計(2016年末)からの推計では、家計が保有する外貨建ての金融資産残高は、前年末比3%増の約50兆6000億円と堅調に伸びており、国内の超低金利を嫌って家計資金が海外資産に流れていることがうかがえます。 そうした中、外国株や債券などの金融商品だけでなく、外貨建ての実物資産となる海外不動産への投資も活発化しており、国内から海外の不動産投資に切り替える個人投資家も増えているようです。ただ、海外の不動産と聞くと「難しい」「ハードルが高い」というイメージが先行して、興味はあってもなかなか手が出せないという方も多いのではないでしょうか。・・・
かつては高い賃貸利回りを誇った日本の不動産ですが、生産年齢人口(15歳~64歳)が減少に転じた1995年ごろから家賃相場は下落基調をたどり、近年は賃貸物件のダブつきも目立つようになりました。総務省の住宅・土地統計調査(5年ごとに実施)によると、2013年末時点の日本の住宅空室率(空家率)は13.5%。その比率は年を追って上昇しており、今年2018年末には約17%、2030年には約30%に達すると予測されています。本格的な少子高齢化・人口減少社会に突入した日本において、賃貸ニーズが年々縮小していく不動産市場は、空室リスクや家賃の下落圧力も高まりやすくなるため、インカムゲインを狙う貸し手にとっては、厳しい環境が続くと見られています。
また、バブル期の日本では不動産価格が急上昇し、キャピタルゲインによって一大資産を築いた投資家も多くいましたが、バブルが崩壊した1990年代以降、長期的な経済停滞と住宅購入層となる生産年齢人口の減少などを背景に、不動産価格は右肩下がりの状況が続いています。人口減少社会が加速する中、今後さらに住宅需要が縮小していくことは明白で、首都圏の一等地などでは一時的に値上がりする可能性はあるものの、全国的・長期的な価格の下落は避けられない状況となっています。
投資ムードが年々高まる、アジア新興国の不動産市場
その一方、高い経済成長を続けているアジア新興国の国々では、人口増加による住宅需要の拡大とともに、国民所得や物価も上昇傾向にあるため、将来的に家賃や住宅価格の上昇が期待されています。
なかでも、いま投資家の間で人気を集めているのがフィリピンです。同国では2000年以降、急激な人口増加と高い経済成長率を背景に、安定的な住宅需要と核家族化の進行による世帯数の拡大が続いており、マニラ首都圏の空室率は8~10%と低水準を維持しています。
平均実質利回りはアジアでも最高水準の7%に達し、家賃も長期的な上昇傾向にあるなど、貸し手に優位な不動産市場が形成されています。ただし、外国人は土地の購入ができないため、投資できるのはコンドミニアムのみとなっており、物件購入の競争率はかなり高くなっているようです。
同じく、高度経済成長が継続しやすいとされる「人口ボーナス期」を迎えたマレーシア、シンガポール、カンボジア、タイでも、国内経済や不動産市場に新たなニーズと活気を生み出しています。これらの東南アジア諸国では、生産年齢人口の増加による豊富な労働力が経済を活性化し、所得の向上が新たな住宅需要を生み出すことで、将来的な不動産価格の上昇が期待できる環境が広がっているのです。
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