こんな顔になりたい!!:城山三郎

2008.02.20

ライフ・ソーシャル

こんな顔になりたい!!:城山三郎

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

鏡に向かって目に映るあなたの顔。それに満足していますか?特に30代、40代以上の方々・・・。

「30歳を過ぎたら自分の顔は自分で責任を持て」。それを言われたのは、小学校3年生の時。9歳。言ったのは二十歳そこそこの新米の女性教師。とてもいい先生だったが、今にして思うとなぜその年齢の彼女が十にも満たない子供にそれを伝えたのかは謎だ。「自分の行動に責任を持て」というメッセージだったのだろうかと思う。意味は理解できないまま、ずっとその言葉は記憶に残っていた。

さて、30歳になりました。その頃、ちょうど3つめの会社に転職。自分の顔つきといえば、「30になってもまだまだ若いじゃん」ぐらいの感覚しかなかった。
さて、数年前、40を過ぎた。さすがに「若いじゃん」はない。しかし、問題はそこではない。元々、色々と考え込むクセがあった。「ゆとりある人生・暮らし」にあこがれつつ、常に時間に、仕事に追われる境遇に自らを追い込むクセがあった。結果として、眉間に常にシワができた。

眉間のシワならまだちょっと渋い感じもする。往年の名優、天知茂 (あまちしげる)、代表作「非情のライセンス」など、ゴルゴ13実写版か思うほど渋い。今、思い返してもシビレる。
が、問題は眉間ではなく、口元なのだ。「口角」というらしい。広辞苑によれば、「口の左右のあたり」。眉間にしわが寄っているぐらいは自分としては許せた。いや、むしろその渋さを演出しようとしていたフシもある。が、口を”へ”の字に曲げるクセが、いつしかついていた。
これはいけない。口をへの字に曲げると頬にシワが寄る。いや、それだけではない。どうにも気む難しく、かつ貧乏ったらしい表情になる・・・ように感じる。朝、鏡に向かう度にその表情と対面するのだ。この先人生が何年あるのかは神様しか知らないのだけれど、鏡を見る度にこの男の顔と相対するのは少々つらいと思っていた。30歳では感ず、40をいくつか過ぎて、先生の「自分の顔は自分で責任を持て」が現実化されたのだ。親の遺伝子のせいではない。生き様が顔に出るのだと。

そんな日々の悩みなのか、懊悩というレベルまでなのかわからない思いを胸に秘めている中で、書店で雑誌をふと手に取った。小学館の「サライ」2月21日号。第一特集は「城山三郎の生涯に学ぶ」だ。

城山三郎については、以前このサイトで”品格ブーム”へのアンチテーゼとして、「粗にして野だが、卑ではない」「男子の本懐」を紹介した。ちょうど没後一年だという。
彼の人は「気骨の人」と評される。「気骨」とは広辞苑をひもとけば<自分の信念に忠実で容易に人の意に屈しない意気。気概。>とある。その信念の源泉が紙面で紹介されていた。<人生を強靱に生きるには、自己を保つ、実績を積む、親しい人を大切にする>と。
そうして生きた男の顔が、紙面で歳を追って紹介されている。

何ともいい顔だ。憧れ。いや、むしろ「男惚れ」という言葉がふさわしいかもしれない。
カメラをしっかり見据えたその視線はどこかやさしい。
そして、最も注目すべきなのは、その口元だ。
どの写真を見ても、必ず口角は引き上げられている。常に微笑を絶やしていないのだ。「微笑」といっても形だけの「スマイル」や「チーズ」ではない。何とも見る者に語りかけるような笑みなのだ。今はこの世にない男に、「なぜ、こんな素敵な顔ができるのか」と、嫉妬すら覚える。
享年79歳。「気骨の人」は常に口元に笑みを絶やさなかった。そんな男になりたいと思った。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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