もし、いまのあなたに一心不乱に没頭できる職業上の目標が確固とあり、そこに邁進しているのであれば、それはとても幸福な働き人です。「登山型のキャリア」でどんどん突き進めばよいでしょう。しかし、世の中には、そういった明確な目標が見出せない人のほうが圧倒的に多いものです。その場合は「トレッキング型キャリア」でいっこうにかまいません。
◆「正解を当てにいく」キャリアは疲れる
今年も、はや5月となりました。就活生の方々はまさに重要な時期に入っていることでしょう。また、今春新しく社会に出た方々は、緊張の4月を終え、「五月病」が頭をよぎる時期となります。
就活生にせよ、新社会人にせよ、就労経験が(ほとんど)ないにもかかわらず、いまの時期、得体の知れないキャリアというものに向き合わねばなりません。そのとき多くの人を惑わす要因のひとつが、「自己分析に照らし合わせて、適職となる仕事を探し当てなければならない」「キャリアはしっかりと目標をもって、計画的に築いていくべきもの」というまっとうめいた助言です。
そのような助言は、一理はあるものの、的外れの部分もあります。キャリア・人生は、あらかじめの正解値があって、その正解値を当てにいくものではないからです。適職とか目標とかを見つけなくてはならないという枷(かせ)が自分を不要に苦しめる場合があります。
以下の記事は、そんな枷を取り払うために読んでいただければ幸いです。
◆山の登頂を目指すタイプと山の回遊を楽しむタイプ
「就職して3年経ちました。特にこれがやりたいとか、何になりたいとか、
目指すべきことが見つかりません。こんな状態でいいのでしょうか?」。
(入社3年目のAさん:26歳)
こうした悩みは若手の会社員の口から多く聞かれます(いや、30代以上にしても、業務上の数値目標以外に目指すべきものを持たない人は多いでしょう)。
確かに会社に入るときは、あれほど志望動機を考えたはずなのに、いざ入社してみると、仕事の内容や会社の様子が実は思っていたものと全然違ったものであったり、あるいは予想外のところに配属されたりして、やがてその志望動機は知らずのうちに消えてしまいます。そして働き始めて数年も経てば、「あれ、自分は何を目指しているんだろう?」というような気持ちになる。
もし、いまのあなたに一心不乱に没頭できる職業上の目標が確固とあり、そこに邁進しているのであれば、それはとても幸福な働き人です。どんどん突き進めばよいでしょう。しかし、世の中には、そういった明確な目標が見出せない人のほうが圧倒的に多いものです。
けれど、そのことにめげる必要はまったくありません。山の楽しみ方に、「登山」と「トレッキング」というタイプがあるように、キャリアにもこの2つのタイプがあるからです。
登山の場合、目標はただ一つ「登頂」であり、その結果を得るためにあらゆる努力をしていく。頂を目指す途中、道草はしない。
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2009.10.27
2010.03.20
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。