ユニクロが変調を来していると多くのメディアが伝え始めた。ここしばらくの売り上げ不振に対して、それは一過性のものではなく構造的な問題が起き始めているとの指摘だ。一方、実際にユニクロの店舗を訪れてみると、以前とは随分と客層が異なってきていることに気付く。ユニクロに何が起きて、そしてユニクロはどこへ向かおうとしているのか。
■「ユニクロ一人負け」の衝撃
ファーストリテイリングが8月4日に発表したユニクロの7月の国内既存店売上高が、3年ぶりに2カ月連続のマイナスを記録したことに対し、「ユニクロ一人負け」として多くの注目を集め、Facebookなどで多数シェアされた記事がある。東洋経済ONLINEの「ユニクロに変調、「一転して独り負け」の深層」である。「一人負け」としているのは、同期に同業他社が揃って業績を伸長させている中での沈下であるからだ。同記事では、「ユニクロの魅力が薄れた」とまず、製品面の問題を指摘している。エアリズムやヒートテック、フリースなどの高機能商品が出尽くし、そのマイナーチェンジに終始するようになっているとの論だ。加えて、「商品価値と価格のバランス」が崩れてきているとも指摘している。
他メディアでもユニクロ不調とその分析を行っている。現代ビジネスは「マクドナルドの二の舞か? なぜだ! ユニクロが突然、売れなくなった「飽きた」「高くなった」「もう欲しい物がない」……」という辛辣なタイトルで、価格上昇による客離れを、原田社長時代にマクドナルドが商品価格を上昇させ続けたことが今日の同社凋落の真の原因であると重ねて分析している。
■ユニクロの客層変化
実際にユニクロの店に行ってみると一目瞭然なのは、もはや若者がいないことだ。 筆者は某私大で非常勤講師として教鞭を執っているが学生に聞いても、ユニクロは高すぎて買いたくない。同じ値段を出すなら、もっといい服がいっぱいあるという。しかし、店内を見回してみると、本来同社商品のコンセプトは「ベーシック、ノンセックス、ノンエイジ」であるはずが、その若者を呼び戻そうとするかのように随分とオシャレで可愛い・カッコイイデザインの服がやたら増えているがわかる。しかし、それを手に取るべき若者は既に店内にいないのだ。
さらに店内の商品を見回すと、過度に高機能になっていることもわかる。冬なら何でもかんでもヒートテック素材になっている。その分値段も上がっている。どれだけ日本人は寒がりになったのか。冬期のウォームビズの行きすぎかと思っていたら、知人のオフィスワーカーの女性は「暖房の効いたオフィスでヒートテックのタイツは履けないし、タイツ1本に千円以上払うのはあり得ない」という。
筆者も一生活者の感覚でいうと、新素材製以外も価格が上がっているように感じてならない。恥ずかしながら白状すると、「寝る時はユニクロのスェット派」なのだが、そろそろヨレたので買い換えようと、まとめ買いして会計をすると、予想外の目玉が飛び出るような金額を店員に告げられ「カードでいいですか?」とか言ってしまった経験がある。ユニクロのスェットは丈夫でヨレるのに数年かかるので、実に数年ぶりにまとめ買いをしたのだが、その間にそれだけ値上がりしていたということなのだろう。
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流通業
2015.06.13
2015.08.26
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。