昨年末(2017年12月7日)、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下で経営再建を進めてきたシャープが、1年4ヵ月ぶりに東京証券取引所1部へ復帰。 シャープの社長を務める鴻海出身の戴正呉(たい せいご)氏が、上場セレモニーで取引所の鐘を打ち鳴らす姿がテレビなどでも大きく報じられた。 ついに念願の1部復帰を遂げたシャープだが、東証2部に降格した当時、わずか1年あまりで1部再上場を果たすとは、誰も予想していなかったのではないだろうか……。戴社長のもと「鴻海流」でスピード展開したシャープの復活劇と、次なる目標に向かう今後のシナリオに迫った。
経営再建と1部復帰を大幅な前倒しで実現
主力の液晶パネル事業の不振によって、2015年度通期連結業績で430億円の債務超過に陥り、2016年8月1日に東証1部から2部へと指定替えになったシャープ。その後、親会社となった鴻海の出資で債務超過を解消し、驚異的ともいえるスピードでV字復活を遂げた。
2017年度上期には、四半期純利益がリーマンショック以前の水準まで回復し、当期純利益は454億円の赤字から347億円の黒字に転換。売上高は前年比1.2倍、設備投資は2.6倍、社員給与は1.2倍、営業利益にいたっては516倍にまで一気に拡大。2017年度通期の業績予想を大幅に上方修正し、当初2019年3月末までとしていた東証1部復帰の目標を、1年以上前倒しで実現させたのだ。
1部復帰の記者会見に臨んだシャープの戴社長は、「これからの100年のために、1部に必ず復帰しなければと思っていた。ようやく目標が果たせた」と語り、前年比の業績を次々と上げながらシャープの完全復活を強調した。
ディスプレイ事業の主軸「8K」に社運をかける
そんなシャープ復活の大きな牽引力となったのが、売上高の過半を占めるディスプレイ事業だ。中国市場においては鴻海の営業部員を動員し、高単価な液晶テレビの販売拡大を強化。また、世界に販路をもつ鴻海の営業力によって、他のアジア各国や欧州でも「AQUOSブランド」の知名度がアップし、その売り上げも右肩上がりに。さらに、収益の低い韓国サムスン向けの液晶パネル供給を打ち切るなど、採算性を重視したコスト削減策も功を奏して、赤字続きだった同事業の営業損益は163億円の黒字に転じた。
こうして4年ぶりの通期最終黒字化も確実となった今、シャープはディスプレイ事業に社運をかけて再始動した。その主軸のひとつとして掲げるのが、4Kテレビの4倍の画素数(約3318万画素)をもつ、超高画質の次世代ディスプレイ技術「8Kエコシステム」だ。すでに中国と日本では8K液晶テレビの販売を開始しており、今後は8K対応の業務用ビデオカメラや医療モニター、監視カメラといったB to B市場も強化する。1部復帰の記者会見でも、戴社長をはじめとする経営陣全員が「SHARP 8K」と書かれた赤いキャップをかぶって登場し、8K投入への意気込みをPRする演出が見られた。
戴社長のトップダウン体制から共同CEO体制へ
かねてより、東証1部に復帰したら社長を辞任したいと発言していた戴社長。会見でも「年齢的なこともあって(66歳)、辞めたいという気持ちに変わりはないが、私個人のワガママは通せない」と語り、中期経営計画が完了する2019年まで経営陣にとどまる考えを表明。また、2018年6月までに次期社長候補となる共同CEOを選出し、新体制への移行や決裁権限の委譲を検討していると明らかにした。シャープは経営危機の時期に多くの幹部が辞職しており、現時点で社内に社長を担える人材がいないことから、次期社長の育成を見据えて段階的に権限を移していくと見られる。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2008.09.26
2010.04.20