『生命はいつ、どこで、どのように生まれたのか』山岸明彦(集英社インターナショナル) ブックレビューvol.8

2016.04.18

ライフ・ソーシャル

『生命はいつ、どこで、どのように生まれたのか』山岸明彦(集英社インターナショナル) ブックレビューvol.8

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

生命とは何か。改めて問われたなら、あなたは、どのように答えるだろうか。このテキストを読んでいる方も、もちろん生命体である。今日、自宅から出社するまでの間にも、数えきれないほどの生命を目にしているはずだ。そこで、もう一度伺いたい。生命とは、一体なんだろうか。

最初の生物に必要なもの
生命の定義らしきものには「3.複製増殖をしている」ことがあった。複製増殖は、どのようにして行われるのか。遺伝情報は、DNAとRNAによって伝えられる。これらは核酸であり、核酸ができるためには「乾燥」工程が必要となる。だから、水の中では核酸を作ることができない。つまり、最初の生命は熱水噴出孔のような場所でできたとは考えられない。
これが著者の主張である。
「それでは、最初の生命はどこで誕生したのでしょうか。私が最も可能性が高いと考えているのが、陸上の温泉付近です(本書、P34)」
ただし、これも現時点では仮説の一つである。最初の生命が、どこで生まれたのかを示す証拠は、今のところ見つかっていないのだ。

生物は何でできているか
例えば大腸菌の分子組成を考えてみよう。水70%、タンパク質15%、核酸7%、炭水化物4%、無機物1%である。この比率は、大腸菌であれ、人間の細胞であれ同じ。要するに生物とは「たっぷりとスープ(タンパク質水溶液)の入った革袋(本書、P96)」と言える。
ここで生命の定義らしきもので記した、1.膜で囲まれていること、2.代謝をしていることが重要になってくる。膜で囲まれているから、中にスープを入れておくことができる。さらに代謝をしているから、栄養素を取り入れ、老廃物を細胞外に出すことができるのだ。そう考えれば、生命とは化学反応と捉えることもできるだろう。実際、脳内で起こっている様々な情報処理も、すべては化学反応の結果といえる。
だとすれば、広大な宇宙の中で、生命を誕生させる化学反応が地球だけで起こったと考えるのは、無理がある。
本書を読めば、生命がいつ、どこで、どのように生まれたのかは、だいたい分かるだろう。すると次には、その先を知りたくなるのではないだろうか。最初に生まれたたった一つの細胞が進化し、それが最終的には人間に至った。それではなぜ、人間だけが「考える(ように化学反応を起こす)」脳を持つに至ったのか。謎は深まるばかりである。

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