「私立高校に行くにはお金がかかる。できれば、公立高校に進んでほしい」、そんな風に思っている保護者はまだまだ多いことでしょう。この文章は、経済的負担の格差を乗り越え、公立よりも付加価値の高い教育サービスを行っていくために日々奮闘している私立高校の先生へのエールとして書きました。
5.8倍の格差にも膨らんだ経済的負担の壁を私立高校が乗り越えない限り、少子化が進むこの時代にあって私立高校の経営的な未来はありえないということです。この壁を私立高校はどのように乗り越え、公立高校よりも付加価値の高い教育サービスを行っていくのか、そのことが、今問われています。
諦めが蔓延していた職員室からの学園改革
では、私立高校はどのような方向性で、経済的負担の格差を乗り越える魅力を身につければよいのでしょうか。
一つは、出口にかかわること。そして、もう一つは、その出口を保証するプロセスだと私は思います。出口とは、いわゆる卒業した後の進路実績です。一方の出口を保証するプロセスとは、高校3年間の学習面・進路指導面でのプログラムです。
私立高校は、より魅力的な学校となるために、現有勢力の分析を行います。教師の顕在能力、教師の潜在能力、教育課程の時代性のチェック、進路指導体制のチェック、生徒の未来像が具体的かどうかのチェックなどなど。また、現在の学習面・進路指導面でのプログラムがこの時代に合っているかどうかを検討します。
私がコンサルティングを実施した私立高校では、上記のような分析を行い、様々な点で問題があったことを認めたうえで、その中で学園改革の優先順位のトップに据えたのは「生徒の未来像」でした。
生徒が高校を卒業して12年後、生徒が30歳の大人になった時にどういう職業につき、どういう家庭を作りたいのか、高校3年間で様々なシミュレーションを生徒たちに行わせるプログラムを作りました。この「生徒の未来像」を探求させるプログラムが、勉強へのモチベーションを高め、進路実績ばかりでなく、生徒の授業への参加意識が高めていったのです。
私がコンサルティングを実施した私立高校(中退率が高い、いわゆる地域の底辺高校でした)に初めて足を踏み入れたときの印象は忘れられません。男子生徒の多くはズボンを腰で履き、これがずり下がっていて、下のパンツが見えていました。目の青い生徒が多かったので、ここは外国かと思ったら、カラーコンタクトをしている生徒が多かっただけでした。また、やんちゃな高校生だけでなく、無気力を絵に描いたような生徒がいました。
そして何より、職員室には諦めが蔓延していました。
「生徒の未来像」をかたちづくるプログラムをテコにして、学園改革を進める中で、この職員室の意識改革が同時進行的に課題として浮き彫りになっていったのです。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.17
2009.10.31
合資会社 マネジメント・ブレイン・アソシエイツ 代表
1961年、神奈川県横浜市生まれ。 現在、合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ代表。 NPO法人 ピースコミュニケーション研究所理事長。