UD商品戦略が支える三菱の“大人家電”

画像: Kamihara Sally

2015.09.08

営業・マーケティング

UD商品戦略が支える三菱の“大人家電”

神原 サリー
株式会社神原サリー事務所 代表取締役/顧客視点アドバイザー

 三菱電機のコンシューマー向けウェブサイト内に、新コンテンツ「三菱“大人”家電」がオープンした。シニア向けの家電の提案ということでは、ターゲットをほぼ同じに設定しているパナソニックの「Jコンセプト」のシリーズと似ている。だが決定的な違いがあるのだ。その違いとは何か。そして三菱の強みとは。すでに5年前に始まっている同社の取り組みから、紐解いてみたい。

2010年から始まった「らく楽アシスト」

 今回、大人家電という新シリーズの製品群を新たに発売せず、既存の製品からセレクトすることができたのはなぜか。先に述べたようにサイズがコンパクトであることや、機能がシンプルであることなどはもちろんだが、それに加え、同社がユニバーサルデザイン(UD)に力を入れてきたことが大きい。

 1959年には第三者視点による評価をするための商品研究所を創立、1995年には家電製品を中心としたバリアフリーデザイン研究の社内プロジェクトが発足し、10年後の2005年にブランド戦略として「ユニ&エコ」を推進。UDの取り組みが本部方針になっている。さらに2008年にはブランド戦略を「ユニ&エコチェンジ!」となり、高齢者・子どもへの配慮を強化、翌年「蒸気レスIHジャー炊飯器」でキッズデザイン大賞を受賞している。

こうした道程を経て、UD商品戦略とそれを支えるUD技術開発をもとに、大々的に発表されたのが2010年の次なるブランド戦略「らく楽アシスト」だ。これは子どもから高齢者、身体の不自由な人まで、できるだけ多くの人が安心して楽に、楽しく使えるデザインを通じて暮らしのクオリティ向上を目指すものだとしている。

 データに基づいた独自のUDガイドラインにより、加齢による見やすさへの配慮として文字の形状や色の識別性、文字の高さ(大きさ)に着目、高齢者にも聞き取りやすい音の利用や使いやすいボタンの配列や操作パネルのデザインをするなど、細かく基準が定められているのだ。

 たとえば、今回のラインアップで見てみると、ジャー炊飯器の内釜の目盛が「▶ ◀」で示されていてわかりやすい“Vピタ目盛”を採用していたり、操作パネルの文字が大きく使いやすい文字であったり、IHクッキングヒーターにはみまもりセンサーが搭載されており、人を検知して安全のための注意を喚起するほか、音声ナビが操作をアシストする機能もついている。

 つまり、「シニア用」に新たな製品を開発をしなくとも、すでにUDの考え方を取り入れた「らく楽アシスト」が随所に散りばめられた製品がずらりとそろっているのが三菱の家電製品ということだ。

次のページ他社製品との連携や視覚障がい者への取り組みも

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神原 サリー

株式会社神原サリー事務所 代表取締役/顧客視点アドバイザー

新聞社勤務を経て、フリーランス・ライターに転身。マーケティング会社での企画・広報などを兼務した後、顧客視点アドバイザー&家電コンシェルジュとして独立し、2008年に株式会社神原サリー事務所を設立。「企業の思いを生活者に伝え、生活者の願いを企業に伝える」ことをモットーに顧客視点でのマーケティングを提案している。

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