地方創生に対する関心の高まりをあり、最近各所で話題にのぼることが多い「ふるさと納税」。そこで今回はふるさと納税のポータルサイト「さとふる」を運営する株式会社さとふるに話を聞いた。
[インタビューバージョンは以下から] 地域をつなぐWEBマガジン「地方創生のススメ」 http://regionwire.com/
地方創生に対する関心の高まりをあり、最近各所で話題にのぼることが多い「ふるさと納税」。そこで今回はふるさと納税のポータルサイト「さとふる」を運営する株式会社さとふるに話を聞いた。
ふるさと納税をもっと簡単に!
そもそもふるさと納税とは一言でいうと自治体への寄付制度のことであり、そして自治体によっては寄付者にお礼品が贈られることもあることから、最近その人気が高まっている。
そして「さとふる」では、ふるさと納税に関わるさまざまな事務作業を一括代行するサービスを自治体向けに提供している。具体的には寄付者向けに寄付先の自治体やお礼品の選定、寄付の申し込み、寄付金の支払いができるWEBサイトを運営するとともに、募集や申し込み受付、寄付金の回収、お礼品手配の在庫・配送管理などの作業を同社で行っている。またふるさと納税をきっかけに、地域に対して興味・関心を持ってもらうためのプロモーションなども手掛けているそうだ。
今までにも各地のふるさと納税の情報をまとめたサイト等はあったが、「さとふる」は単にまとめるだけでなく、自治体の事務作業を代行しているところが大きな違いであり、全国規模で提供したのは同社が初めてだと言って良いだろう。
同社はソフトバンクのグループ会社であり、今までにもグループ会社では地域に関わる事業を展開してきた。そしてその過程で自治体からふるさと納税に関わる雑務が大変だという話をよく耳にしていたそうだ。中には職員がお礼品の購入から発送まで、一件ごとに手作業で行っているような自治体もあったと言う。
「そんな実情を知って改めてふるさと納税について調べてみると、自治体の財政改善はもちろんのこと、お礼品という形で地域産品などの新たな需要が生まれるため、地域の事業者にとっても有効な制度であり、さまざまな地域効果が期待できることがわかりました。」(取締役経営戦略室室長・高松俊和さん)
そこでふるさと納税に関わる業務をIT活用によって負担軽減することで、今までそれらに費やしていた時間を本来の業務に集中できるようにして、そしてふるさと納税をより普及・活発化させようということで「さとふる」を始めるに至った。
「待っていられない!」と半年前倒しでサービス開始
サービス開始前に幾つかの自治体に構想を話したところ、各自治体でふるさと納税に関する管理システムを構築するのは大変だが、全国共通のプラットフォームを構築することで、スケールメリットとコストメリットの双方を生み出すことが出来るため、どこへ行っても好反応だったそうだ
ヒアリングを行ったのは2014年夏で、そのときは2015年春からの開始を考えていたが、「そんなに待っていられない」という声も多く、そこで前倒しして2014年10月から開始。開設時は5自治体から始まり、毎月2、3箇所ずつ取扱い自治体を増やしている。
株式会社さとふる 取締役 経営戦略室室長 高松俊和さん
また一般ユーザーについても、正直果たしてどれだけ利用されるのかと不安交じりでのスタートだったそうだが、ふるさと納税自体の認知が上がってきていることもあり、開設から約半年で会員登録数1万人を突破した。
一方でふるさと納税をきっかけに地域を知ってもらうことを目的に立ち上げたサービスであるが、まだ開始から1年弱ということで、地域の魅力発信という点では不十分であると課題を認識している。
そこでお礼品である地域産品の魅力をいかに引き出し、そして伝えるためのコンテンツ力を向上させていくことはもちろん、それら地域産品の生産に携わっている方々をもっと打ち出していくべく、現在検討を進めているそうだ。
また寄付金を集めるだけでなく、集まった寄付金がどのように使われるのか、使われたのかをきちんと発信することが出来るようにしていきたいとしている。
ふるさと納税をきっかけにした地域活性化を模索
ふるさと納税に対して「お礼品競争になっているのではないか」という意見もあるが、高松氏は「最初はお礼品目的でも良い」と言う。お礼品を通じてその地域に対して興味を覚えてもらうことで、「定期的に購入しよう」と物販につながったり、「行ってみよう」と観光につながったり、さらには移住・定住につながったりなど、お礼品をきっかけにすることでさまざまな地域効果につなげていくことが出来ると考えているからだ。
新潟県十日町市のお礼品「まつだい棚田バンク里親ミニコース」では、田植え体験ができる。
またお礼品は地域の事業者の手で生産されるものが大半であるため、地域経済にとっても意味が大きいと考えている。確かに今はインターネットが普及しているが、一方で事業者が独自でECサイトを立ち上げようと思えばそれなりの労力や費用がかかるし、大手ECポータルに出品しても数多の中に埋もれてしまうのが関の山だ。そうした中でふるさと納税は地域の事業者にも還元されるとともに、事業者が全国展開を図るファーストステップにもなりうるのかもしれない。
「ふるさと納税を寄付者にとっても、自治体にとっても、双方にとってより簡単に出来るサービスにしていくことでふるさと納税の利用・普及を促しながら、まずは地域産品の物販につなげていきたいと思います。そして将来的には観光や移住・定住なども含めた地域活性支援の総合プラットフォームにまで成長させていきたいと考えています。」(同氏)
全国各地からあの手この手で日々情報発信されている中で、個々の地域に気づいてもらうのは至難の業である。しかし気づいてもらえなければ何も始まらず、大量の情報に埋もれてしまっている地域も散見する。そうしたなかで「気づいてもらう」、そのきっかけとして「さとふる」では「ふるさと納税」を切り口にしている。
また当社(RegionWire社)では全国各地から日々発信される情報の渦に埋没することなく、ユーザー属性と地域属性による情報マッチングを行うことでユーザーに気づいてもらう、そんな自治体向け情報発信プラットフォームを開発し、8月開始に向けて現在最終調整を行っている。
AIDMAしかりAISASしかりAMTULしかり。人間の態度変容の全ての起点は「知る、気づく」こと。どんなに地域に魅力があっても、どんなに施策を充実させても、気づいてもらえなければ何も始まらない。そんな当然の視点が実は一番不足しているのかもしれない。
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2008.09.26
2010.04.20
「地方創生のススメ」編集部 (東京過疎化プロジェクト)
合同会社RegionWire
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