移民で介護の人手不足は解消できない。物議を醸した差別発言コラムのそもそもの勘違いはそこにある。
参考までに労働人口の推計も載せておくが、およそ日本の労働力として移民を頼みにできるような状況が続くとは思えない。『各国・地域別にみると、既に我が国では、2000年から生産年齢人口比率が減少しており、アジア最大の人口を抱える中国でも2015年から同比率が減少する見込みである。インドにおいても、2045年をピークに生産年齢人口比率が減少に転じ、その他アジアにおいては、2020年頃までに同比率が減少に転じると予想されている。』(『通商白書2010』*3より抜粋)
よほどの好待遇で、日本がもろ手をあげて快適な環境を用意して誘致したとしても、そうそう日本に労働力は来なくなるだろう。それなのに、文化や思想が違うから居住区を隔離するような国に、『出稼ぎに来たいという近隣国の若い女性達』が大量にいると思うこの勘違い。しかしこの、曽野綾子的勘違いは、実は日本のサイレントマジョリティの思想に近いのではないかと疑っている。
日本で、要介護者が年間5%程度増加していることを考えると10年後の2025年には600万~700万人をなんらかの形で介護しなければならない。一人を3人でみるとして1800万人~2100万人くらいの介護要員がいる計算になる。介護に限定せず、減少する人口の25%分を移民でなどと考えると、単純計算で移民数は3000万人~4000万人規模になる。およそ現実味のない数である。自分たちがやりたくない仕事は移民がやればいいなどという勘違いは早々に改めた方がいいと思う。
*1 2015年2月17日朝日新聞デジタル配信より転載
*2 東京大学社会科学研究所「ガバナンスを問い直す」プロジェクトHPのデータ集を参照
http://web.iss.u-tokyo.ac.jp/gov/asia-data.html
*3 経済産業省「通商白書2010」を参照
http://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2010/2010honbu...
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