女性高齢者が男性高齢者よりも幸福である理由。【老いの工学研究所のHPに掲載したコラムを、転載しました。】
さて昨今、企業はもっと女性を活用すべきだという議論が盛んである。処遇形態の多様化・弾力化、労働時間の短縮、管理職への登用促進など様々な面を改善して、女性にもっと活躍してもらおうという動きは、1986年の男女雇用機会均等法のときに比べても、はるかに本気度を感じる。もちろんこれは素晴らしい機運であり、遅すぎるくらいであり、「女に仕事は向かない」といった根拠のない思い込みで女性を差別してきたことを、大いに反省すべきだ。しかしながら、高齢女性が女性差別の結果として幸福を得られているのであれば、今後、男と同じように仕事に駆り出されることによって、将来、高齢女性の幸福度が低下してしまうのではないかとも考えられる。
高齢期に女性は幸福になるのだから、女性差別はこれまで通りにしておくべきだと主張したいのではない。「女性の活用」で、男はそのまま、女も男と同じように働くようになってしまえば、女性までもが地域や家族との関わりを失い、高齢期の幸福度が低下してしまうかもしれず、そのような事態は避けるべきだということである。高齢期の幸福度を高めるためには、男性も若いうちから地域や家族との関わりを持つこと、女性もこれまでのような力を失わないように働くことが肝要になる。「女性の活用」とは、女性に男性のような働きぶりを求めるのではなく、男女が仕事・家族・地域に関する役割を上手に分担するように努めることだと理解すべきだ。それは、高齢者の幸福度が高い国づくりにもつながっていくはずである。
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2015.07.17
2009.10.31
NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。