新規事業に失敗しない方法<上>

2013.10.20

営業・マーケティング

新規事業に失敗しない方法<上>

小倉 正嗣
株式会社リアルコネクト 代表取締役

新規事業の多くは失敗する。その失敗の原因を経営者のパターンごとに分析し、成功の為の処方箋を書く。

ここで、アサヒビールを事例として考えてみよう。2007年ころに発売したカゴメとの共同開発商品の「トマーテ」。開発にはかなりの時間を要したとの現場の言もあるが、これは新規事業といえるだろうか?あるいは、先日発売されたスーパードライの黒ビールであるドライブラックを開発したケースはどうだろうか?トマーテの場合は、カゴメとのアライアンスと言う要素、野菜のカクテルというそれまでに手がけていないカテゴリーの製品開発、ターゲットとなる顧客セグメントがビールと大きく異なることを考えると新事業と言ってよいと考える。しかしドライブラックは、従来のスーパードライと比べてターゲットが大きく変わるわけではなく、流通も特に変更なく、他社の協力を仰いだという情報も出ていない。変更点は、素材とプロモーションだけである。従って、新事業というよりやはり新製品開発領域のチャレンジであると考えるのが正解であると考える。

上記アサヒビールの事例から考えると、新事業と考えられる新製品開拓の定義は、従来と異なるアライアンスパートナーとの事業展開、新しいカテゴリーの製品・サービスの開発による新しい顧客ターゲットの開拓、流通経路の大幅な変更を伴う新製品開発を指すと考えて良いのではないだろうか。平たく言うと戦略ドメイン上の「誰に」「何を」「どのように」の複数の要素について新しい取り組みを行う場合に新規事業であると一旦は定義可能であると考える。2つの新しい取り組み、1つの既存リソースであれば、既存シナジー型の新規事業であるし、3つとも新しい取り組みであれば、既存事業とは切り離された、完全なる多角化型新規事業と言える。

基本的には新規事業と言う存在は、その企業内のリーダーが新たな事業を興すと決めた時に発生し、企業内部で新規事業と定義づけられるため定義は主観的且つマチマチであると言わざるをえない。従って上記の新規事業の定義はあくまで当コラムの内部における筆者の定義と考えて頂きたい旨を最初に断っておく。

Ⅱ.新規事業を失敗させる罠

筆者は、今までいくつかの新しい事業の立ち上げを経験した。また、経営コンサルタントとして起業に関与した数も相応にある。その中で感じているのは起業に比べて新規事業のほうが圧倒的に有利な条件でスタートできるにも関わらず、失敗するケースが多いということだ。

新事業の立ち上げが起業に比べて有利であることは言うまでもない。新規事業はあくまでも企業内部の存在である。バックボーンとなる企業があり、まずは借入金ではなく出資という形で始められる。企業内の一部署としてスタートした場合などには、従来のプロセスと同じ予算取り方法を踏襲するため、必要な資金を得ることにそれ程の苦労は要らない。金融機関を駆けずり回り、親族一族に頭を下げ、事業計画書にダメ出しをされ、失望と希望の間で揺れる起業時の資金調達に比べてどれだけ恵まれていることか。

続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

小倉 正嗣

株式会社リアルコネクト 代表取締役

【自己紹介】 BtoB営業組織改革・新規事業開発を専門とするコンサルタント。新規事業企画担当者・営業マネージャー・B2Bマーケッター・営業マン向けのセミナー/研修/ワークショップの講師・ファシリテーターを中心に営業組織改革、新規事業開発支援等のコンサルティングを行っている。 【保有資格】 中小企業診断士・経営管理修士(MBA)・日本酒利酒師

フォロー フォローして小倉 正嗣の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。