某ニュースで不思議な発表を発見。しかし、こうした勘違いは実際のビジネスでも散見される。ビジネスパーソンはどのような視点を持つべきなのか。
インターネットのニュースで<エコノミー症候群 女性客に集中発生>というタイトルをみた。このタイトルだけ読むと、「女性は発症の危険性が高いのか!」と勘違いしてしまいそうだが、記事をきちんと読むとそうではない。
「女性患者にはトイレに行きたくないから水分を取らなかったという人が多い。水を飲まないのはよくない。」という医師のコメントが記載されていた。
エコノミー症候群→女性に発症が集中、という勘違い。
エコノミー症候群→[血液濃度の上昇によりうっ血性心不全や肺血栓塞栓症を発症する→水分の摂取と体を動かすことが対策として必要→女性は飛行機内でトイレに行きたくないと考える→結果として水分を取らなくなる→トイレに行くために体を動かすこともしなくなる]→女性に発症が集中、が正解だ。
つまり短絡的に考えると[ ]内をすっ飛ばしてしまい、根本原因を見誤るのである。
因果関係を明確にすれば、エコノミー症候群→水分摂取をしない・体を動かさない人に集中発生という従来から知られた結果となり、今回の報道は女性に集中発生のメカニズムを実証したことに価値があるのだと理解できる。
こうした過ちはビジネスの世界でも散見される。
マネージャーが呈する自部門における問題点。代表的な意見に「業務ミスがなくならない」というものがある。
「業務ミス」は問題ではあるが、それは「現象」であり、「根本原因」ではない。
先の例における「女性に集中発生」のようなものだ。そこに至る因果関係が重要なのだ。
業務ミスの原因は何か。ちょっと考えれば、業務知識が足りないのか、モチベーションの低下により集中力を欠いた状態なのかが推察できる。
問題は知識か意識か、もしくは複合的なのか。
根本原因を追及しなければ対処方法はわからず、「業務ミスが多いという問題が発生している」→「ミスを削減するため全員慎重に業務を遂行するように」という解決に至らない指示を出すことになってしまう。
数学者のジェフリー・S・ローゼンタールもベストセラーの著書、「運は数学にまかせなさい」(早川書房)で因果関係の重要性をおもしろい例で示している。
<現代では喫煙によって肺癌になる危険性が大幅に高まるというのが定説だけれど、かつてはこの関係が議論の的になっていた。ところで、タバコのせいで喫煙者の指にうっすらと(無害な)黄色い染みができることがあるのも事実だ。(喫煙にあまり詳しくない研究者がいたとして)本当は指の肺癌も黄色い染みも喫煙が原因だけれど、それを知らなければ勘違いして”黄色い染みが肺癌を引き起こす”と結論する可能性がある>。
もちろん、ローゼンタール自身、誇張した例だとしているが、先のエコノミー症候群の例のように、よく考えれば、またはきちんとした情報解釈をすればわかる因果関係を取り違えている例である。
問題解決能力は全てのビジネスパーソン、とりわけマネージャーのスキルとして求められるものである。その根本には原因追及と、因果関係の解明能力が欠かせないことを忘れないようにしたい。
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2009.04.24
2012.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。