方法やプロセスはその人そのものを写す。方法やプロセスにかけた厚みこそ、その人の厚みになる。だから私たちは安易に教わりすぎてはいけないのだ。
また、濱田の代表的な技法のひとつとして「流し掛け」というのがある。濱田は成形した大皿を左手に持ち、右手にはひしゃくを持つ。ひしゃくにたっぷりと釉薬を汲み、大皿の上にすっと縦に釉薬を走らせる。そして左に持つ大皿を手の平でひょいひょいと90度回転させるやいなや、再び釉薬を縦に無為に走らせる。すると大皿に十字にしたたる線が描きあがる。これを焼き上げると、躍動的で面白みある表情が出る。これが流し掛けだ。この潔く堂々とした方法こそ濱田そのものだと私は感じる。そしてまた、一見、無造作に流し掛けた線であっても、それがきちんと濱田庄司という人間の器にかなった線が出る。そこが芸術の面白いところだ。
ちなみに流し掛けを巡って、濱田は「一瞬プラス六十年」というエピソードを書き残している。ある訪問客が、これだけの大皿に対して、たった15秒ほどの模様づけではあまりに速すぎて物足りないのではないかとたずねたそうだ。そのときの濱田の返答───
「これは15秒プラス60年と見たらどうか」。
……60年とは言うまでもなく、濱田が土と戦ってきた歳月の長さだ。
方法やプロセスはその人そのものを写す。方法やプロセスにかけた厚みこそ、その人の厚みになる。だから、私たちは安易に教わりすぎてはいけないのだ。
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2009.10.27
2008.09.26
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。