アサヒビールのノンアルコールビール、 「ドライゼロ」 のヒットの影には、オーソドックスなマーケティングリサーチに基づく明快なコンセプト開発がありました。
ノンアルコールビールは、ここ数年で急激に拡大した市場のひとつですね。
市場規模としては、ビールが年間4億ケースに対し、ノンアルコールビールは2000万ケース程度のようです。
さて、アサヒビールが2010年に出した
「ダブルゼロ」
は、キリンビールの「キリンフリー」や、サントリーの「オールフリー」に太刀打ちできず、
「一人負け」(シェアは2%と低迷)
の状態でした。
アサヒの「ドライゼロ」は、ダブルゼロの屈辱を果たすために開発され2012年2月に発売。2012年の売上は500万ケースの見込み。ノンアルコール市場2位のキリンフリーを抜き、シェア24%を上回ったと見られています。
このように、発売以来、好調に売れている
「ドライゼロ」
の開発に当たっては、王道を行く、つまりオーソドックスな
マーケティングリサーチ
が行なわれています。
まず、ノンアルコールビールやビールを飲む頻度や量についての「予備調査」が
実施されています。これは、本調査を行なうにあたって、調査の掘り下げの方向性を見極めるために実行されたものでしょう。
次いで、本調査を2回実施。延べ対象者数は1,000人という規模でした。
調査の目的としては以下の2点。
1.ノンアルコールビールを飲む頻度、量、状況 (シーン)などの飲用実態を把握すること
2.顧客が持つ競合ブランドに対するイメージを把握すること
1番目のノンアルコールビールの飲用実態で、アサヒの担当者が着目したのはビール愛飲者のノンアルコールビールを飲む状況です。
例えば、
「ビールをいつも飲んでいるが、
翌日仕事が忙しいときは控えたい」
「休肝日を作りたい」
といった理由でノンアルコールビールが飲まれていたのです。
従来、ノンアルコールビールは、妊婦さんや運転中など、アルコールが飲みたくても飲めない状況が想定されていました。しかし、ビール愛飲者が自らの意思であえて「飲まない」という選択をするときもあることが明確になりました。
一方、ブランドイメージについては、
「ポジショニングマップ」
を作成したところ、オールフリーをはじめとする競合製品は、
「健康」
「女性的」
といったイメージが強いものでした。
また、味については「フルーティ」という評価で、ビールとはそもそも違うものという認識が強かったようです。
一方、ポジショニングマップで空白地帯(ホワイトスペース)となっていたのが、
「男性的」
「ビールに近い」
といったイメージ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。