Facebookを使ったサイバーパンクとしての将来像予想。
「これ見たらびっくりしちゃった。だって、シミュレーションの結果が、工藤くんそっくりの顔なんだもん」
あたしは驚いて、画面を見つめた。そこには数日前に見たばかりの工藤くんにそっくりな顔が表示されていた。「ほら、隣のキーで、何歳ごろかっていうのも指定できるんだよ。だから、6歳に設定したんだ」
「まあ、たしかに……。似ているわねえ……。でも、これはたまたま……」
でもマコトは首をふって、「これを見て」といった。そこには、工藤くんのパーソナリティ、学力、顔などが事細かに分析されていた。あたしは驚いて声がでなかった。ほとんどあたっていたのだ。
「ねえ、子どもってさあ、生まれたときからどうなるのか、もうわかっちゃっているんだね」
「そんなことないわよ。あなただって勉強をがんばったら、工藤くん以上の成績になるんだから」
そうかな、マコトは唇をあげて、信じないといった顔をした。すると、真面目な顔に戻って、私を見つめた。「それでね、ママ……。やっちゃいけないと思ったんだけど……」。そのとき、あたしは予想はしていたけれど、やっぱりか、と思わざるをえなかった。「パパとママのフェイスブックのIDを使って、この『究極のマッチングサービス』をやってみたんだ。これが、その結果でね……」
まるでマコトを写したような顔が映し出された。「あら、まあ……。これは」
画面にはこうあった。「パーソナリティ:落ち着きがなく、一つのことに集中してられない。パーソナリティ障害の恐れあり。学力:IQ80程度。図工や体育などは通常レベルだが、とくに算数・理科などが苦手で論理的思考に欠ける」。
「まるで、ぼくのこといっているみたいだね」。マコトはなぜだか笑っていた。たしかに、マコトの成績はよくない。そのなかでも、算数や理科などはテストで満足な点数をとったことがない。
「いや、でも、これもたまたまでしょう。あたしは、こんなものを信じて、マコトが勉強しなくなることのほうが怖いわ」
マコトは続ける。「でもね、ママね……。これもやっちゃいけないと思ったんだけどね。ママのフェイスブックを見ていると、15年前にパパ以外のひとと遊んでいるよね。佐藤正人さん」
その名前にあたしは驚いた。ずっと前の彼氏の名前がマコトから出てくるとは思わなかったからだ。「やめなさい、そんなにママのことを詮索するのは!」。マコトはそれでも続けた。
「だけどね、だけどね。この佐藤さんとママのIDを入力すると、ホラ……」
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2012.12.25
2016.03.14
未来調達研究所株式会社 取締役
大阪大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務に従事。未来調達研究所株式会社取締役。コスト削減のコンサルタント。『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎新書)など著書22作。