山形交響楽団は、同交響楽団音楽監督、飯森範親氏の優れたマーケティング思考によって劇的な改革を成し遂げた興味深い事例です。
CDを販売することはもちろん宣伝にもなり、山響の演奏をCDで聴いたクラシックファンが、全国から山形にやってくることも増えました。
------------
2.コミュニケーション改革
どんなに素晴らしい演奏ができても、その良さを上手に伝えなければお客さんは興味を示してはくれません。
マーケティングコミュニケーションのキモは、
「良いものをより良く見せる」
ということなのです。
飯森氏は、山響に
『食と温泉の国のオーケストラ』
というキャッチフレーズをつけました。
山形の「食」のおいしさ、そして山形のすべての自治体にあるという、豊富で個性的な「温泉」の魅力を抱き合わせにして、
「魅力あふれる山形のシンフォニーオーケストラ」
という
「ブランドアイデンティティ」
を明確化したのです。
このキャッチフレーズは、
「山響・温泉グルメツアー」
という演奏会と温泉・食事をセットにした旅行パッケージとしても具現化され、県外の客を多数集めることにつながりました。
また、定期演奏会の年間プログラムは、従来は、A3のチラシを折りたたむスタイルでしたが、飯森氏は、フルカラーの立派なプログラムを作ることを指示。
なんとか経費をやりくりして作ったところ、
「山響が変わった」
という印象を一発で与えられる効果があり、山響のステータスも上がった。聴衆からも好評を博したのです。
--------------
3.運営改革
飯森氏就任以前、山響の定期演奏会の日程は月曜や木曜など、平日がほとんどだったそうです。しかし、飯森氏以降は、
金・土・日
に開かれるようになりました。
以前は、客が聴きに行きやすい日程を選んでコンサートを開くという、言われてみればごく当たり前のことができていなかったわけです。
---------------
山響は、こうした飯森氏の一連の改革によって、経営の黒字化を果たし、昨年の大震災の影響を受けながらも、今年、無事に40周年を迎えました。
飯森氏は、
『マエストロ、それはムリですよ』
の中で次のように語っています。
「消費者のニーズをリサーチするアンテナを張ることで、それに敏感に反応しながら、常に先を行く、良い意味で消費者の期待を裏切るようなレアな商品を提供し続ける」
飯森氏は、「指揮者」としてだけでなく、事業会社の「マーケター」としても、間違いなく成功したことでしょうね。
飯森氏のこうした考え方、そして山響で行なった改革のアプローチは、他のオーケストラにとっても良い
次のページ「ロールモデル」
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.10
2015.07.24
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。