【設問】「リスク(risk)」という概念をあなたなりに定義し、図に表現しなさい。───「図解」がひとつのリテラシーとして注目されつつあるが、ここでは、さらにその発展形として「図観」というものを「マンダラ」をキーワードに考えてみたい。
つまり、次のようなことが見えてくる───「挑戦にはリスクがある。しかし、このリスクを乗り越えたところには、資産獲得が期待できる」「挑戦しないことにもリスクがある。このリスクは機会損失につながっている」。
しかし、ここで一つの疑問が出てくる。挑戦する場合、成功もあるが失敗もある。失敗はネガティブなことではないのか。だから、挑戦することの半分は、ネガティブゾーンとして図を描かねばならないのではないか、ということだ。これはとてもよい自問である。
失敗は一見、成功の反意語でネガティブな意味に捉えられる。しかし、発明王エジソンはこう言っている───「私は失敗したことがない。うまくいかない1万通りの方法を見つけたのだ」と。つまり、失敗は1つの経験知であり、成功への立派な過程であるということだ。となれば、失敗もまた資産側に計上すべきものである。この考え方に立てば、成功の反意語は、「挑戦しないこと」となる。
それで、思考をあれこれ巡らせた結果が、図3の【B-発展】になる。ちなみに、「挑戦する」の右上に「種」とあるのは、成功するにせよ、失敗するにせよ、挑戦という行動の中には、次の挑戦の種が宿されることを表現したかった。
◆「マンダラ化」とは図観=図によって物事を観る作業である
さて、この「種」によって、どんどん挑戦が重ねられるという経時的な目線を入れると、図がさらに展開を始め、「リスク」という概念についての一つの世界絵、つまり「マンダラ」ができあがってくる。それが図4だ。
1回目の挑戦(チャレンジⅠ)を終えて、2回目の挑戦(チャレンジⅡ)にいくとどうなるか。挑戦した人間は「獲得資産Ⅰ」を得るし、挑戦しなかった人間は「後悔Ⅰ」が残る。チャレンジⅢ、Ⅳ、Ⅴと進むにつれ、それぞれ獲得資産がⅢ、Ⅳ、Ⅴと積み上がっていき、後悔Ⅲ、Ⅳ、Ⅴと膨らんでいく。前者は言ってみれば、「勇者の上り階段」であり、後者は「臆病者の下り階段」である。このような図を私は「マンダラ」と呼んでいる。
1つの概念の定義化からマンダラ化まで思考作業を深めてくると、その概念についての理解がとてもふくよかなものになる。そして自分なりの解釈を絵図として把握することができる。マンダラはある部分、主観的な切り口によって描かれるので、たいてい作品としての個性が出る。しかし、マンダラを通して捉えようとするのは、あくまで普遍的な本質である。それはまさに「図によって観ること」(=図観)である。
情報を図化する世界は、地図やダイヤグラム・チャートのように具体的なデータや数量を簡潔に表す方向があるのと同時に、モデル図や「マンダラ」のように概念を抽象化していってそれを一幅の絵図に収める方向がある。前者は「一見してのわかりやすさ」を求め、後者は「豊かな理解」を求めるものとなる。
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2009.10.27
2008.09.26
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。