『人間性の心理学』に基づくマズローの欲求段階説に対する大きな誤解を解く。
マズローは、5つの欲求の「より優勢かどうか」に基づく上下関係は、決して不動のものではないとも主張していました。個人や社会、状況によっては入れ替わることもある。あるいは、しばしば見られることですが、愛・所属の欲求や承認欲求が十分に満たされている人の場合、空腹や不安などの下位の欲求が満たされない状況に‘耐える力’があります。
また、生まれながらにして、創造への動機(例えば、絵を描かないといられないといった、天才芸術家に見られるような衝動)が強い人は、生理的欲求や安全的欲求が満たされなくとも、ひたすら自己実現的な欲求を満たそうとします。
さらにマズローは、人の様々な欲求充足行動に対して、その要因をひとつの欲求から来るものと考えるべきではないとも述べています。個人のある行為を分析すると、その中には、その人の生理的欲求、安全の欲求、愛の欲求、自尊心の欲求、自己実現の欲求の、それぞれの表れを見い出すことが可能だと、マズローは指摘していたのです。
マズローの欲求階層説は、消費者心理・行動を理解する上で有用な仮説のひとつであることは間違いありませんが、固定的な枠組みとして把握しない、活用しないようにしたいものです。
『人間性の心理学-モチベーションとパーソナリティ』
(A.H.マズロー著、小口忠彦訳、産能大出版部 改訂新版)
(初回2012年7月9日掲載)
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.17
2015.07.21
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。