ますます短期的な成果が求められるビジネス現場にあって、「結果を出すこと」と「プロセスをつくること」のどちらが大事か?───は、とても悩ましげな問題です。このテーマを深く考えることは、結局、「働くとは何か?」「仕事の幸福とは何か?」につながっていきます。
そう、やはり勝つという結果にはこだわるべきなのです。特に若いうちは、野心でも利己心でも、ギラギラと何かを獲得しようと動き、もがいたほうがいい。最初から結果を求めずに、「私はプロセス重視派です」なんて言うのは、実際のところ、逃避か臆病か怠慢の言い訳にしかなりません。そういう姿勢は、結局、先の2人(大原と湯川)の言った「成功を考えないこと・プロセスが実は大事であること」の深い次元での理解からも遠くなります。
◆幸福とは意味に向かって坂を上ること
結果や成功を語るとき、そこに忘れてはならないワードは「目的」です(目的は“意味”と置き換えてもよい)。何のための結果を追い求めているのか、何のための成功を欲しがっているのか───それが何か大きな意味につながっているなら、やがて結果も成功も心の中心から外れていくでしょう。代わって、プロセスに身を置くことが幸福感として真ん中に据わってきます。
ですが、そのとき仕事がまったくラクになるかといえば、そうではないでしょう。ほんとうにやりがいのある仕事はやはり「しんどい」んです。挑戦であり、戦いですから。「けど楽しい」。これが事実です。幸福というのは、決して安穏として夢見心地に浸る状態ではありません。
「幸福とは、自分が見出した意味に向かって坂を上っている状態」。
───これが私の考える幸福の定義です。
フランスの哲学者アランが『幸福論』(白井健三郎訳、集英社)の中で、「登山家は、自分自身の力を発揮して、それを自分に証明する。かれは自分の力を感ずると同時に考慮する。この高級な喜びが雪景色をいっそう美しいものにする。だが、名高い山頂まで電車で運ばれた人は、この登山家と同じ太陽を見ることはできない。……人は意欲し創造することによってのみ幸福である」と言っているとおりです。そして、そうした状態でやっている仕事が、実は「天職」なんだろうと思います。
「結果とプロセス」どちらが大事か、という問いに対する私の結論は、───「大いなる意味」を見つけ、そこにつながる「大いなるプロセス」を一つ一つ楽しもう!です。はて、このとき「結果」はどこにいったのでしょう?……「大いなる意味」の下で働くとき、「結果」を出すことは、大いなるプロセスの中に溶け込んでいきます。あるいは、「結果が出た/出なかった」に一喜一憂せず泰然自若と構えられるようになります。
これを日々溌剌と実践できる個人が一人一人増えていくことによってこそ、溌剌とした組織、快活で健やかな社会ができあがるのだと思います。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2009.10.27
2008.09.26
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。