「成果主義」の時代を生きるために

2012.06.28

仕事術

「成果主義」の時代を生きるために

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

ますます短期的な成果が求められるビジネス現場にあって、「結果を出すこと」と「プロセスをつくること」のどちらが大事か?───は、とても悩ましげな問題です。このテーマを深く考えることは、結局、「働くとは何か?」「仕事の幸福とは何か?」につながっていきます。

◆「しんどくてツライ」か・「しんどいけど楽しい」か
 私は、企業の現場で「仕事とは何か?」「よりよいキャリア(職業人生)とは何か?」「プロフェッショナルとは何か?」といったテーマを研修にして実施しています。そうした教育プログラムを開発するにあたって、顧客企業の人事担当者といろいろと討議をするのですが、そのときに必ず出てくる職場問題の一つが、

 ───「みんな『目標疲れ』している」ということです。

 「目標疲れ」とは、毎期毎期、個人に課される数値目標、担当部署が掲げる数値目標を達成せよというプレッシャーに疲れることです。確かに、目標どおりに結果が出れば、達成感があってうれしいですし、その努力は給料にも反映されることでしょう。ですが、昨今の経済は必ずしも右肩上がりではなくなり、単純に対前年何パーセント増という目標を立てて結果を出すことが難しくなっています。加えて、多くの会社が成果主義制度の導入に踏み切ったことで、「結果を出さなければ」の精神的負荷はますます一人一人の社員に増しています。

 私もサラリーマン時代の経験で知っていますが、思うとおりの結果が出ないときは気分が落ち着かないものです。胃も痛くなるし、頭もさえない。上司との会話もぎこちなくなるし、自分が何かフワフワと漂流している感じで、「このままの状態でいいのかな」と不安にもなります。ましてや年次が上がってきてチームリーダーや管理職ともなれば、今度は自分が目標を部下に課さなければならなくなる。「サザエさん症候群」ではありませんが、日曜の夕食時、テレビからあの番組のテーマ曲が流れてくると、気分が重くなったものです。

 次の図を見てください。Aさん、Bさん、2人の働き様を表しました。

 Aさんの状態は逆台形です。とても不安定で、いまにも倒れそうな感じです。なぜなら、目標が重くのしかかっていて、自分の能力と時間をどう使うかというプロセスが小さくしぼんでいるからです。こういうあっぷあっぷの状態で、なんとか日々の仕事をやりきっている人が、実は日本の職場に増えています。仕事が「しんどくてツライ」という心理モードです。

 他方、Bさんはとてもどっしりとした形になっています。言ってみれば「富士山の上に太陽が輝いている」感じです。プロセスが力強く土台をつくり、そこから目標へとつながっています。そして目標の先に目的があります。「目標」と「目的」という言葉は混同して使われがちですが、目標とは単に成すべき数量や状態を言い、目的はそこに「~のために」という意味が加わったものです。

次のページ◆「結果追求」から解き放たれた人間が得る「ライフワーク」

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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