『テロとの戦い』という名の下で、監視社会に向けてさまざまな技術が導入されている。それは国民の安全、国家の安全のためと言われるが、実際は誰が、なにを監視するためなのだろう。
つまり、これらのコミュニケーションネットワークを監視する技術を持つ企業は、将来有望な、新しい産業なのだ。営利目的の企業ならこの技術がどのように使われようともそれを広めようとするのは当然であろう。DPIをWebのブラウジングに使えばオンラインでの動きはすべて記録でき、その情報こそマーケティングの専門家が求めているものだ。つまりDPI技術を使ってWebサイトを分析すればプロバイダーはGoogleのように利益を出すことができるようになる。また知的所有権の観点から違法ファイル共有をやめさせたい場合も、DPI技術を使えばファイルをダウンロードしようとする人をブロックすることも可能になる。
商用だけでなく、フランスではこの技術を使い捜査の一環として容疑者の通信を監視することは合法的におこなわれている。この技術を使えば、政府は好ましからぬと政府が認めた国民の通信をモニターすることは可能だということだ。
アメリカもフランスも、IT関連機器のメーカーに対し、こうしたインターネット利用の監視や制限を可能にする機器を外国政府に販売しないよう求めてはいる。しかし欧米が利用しているものを、イランや中国が利用しないはずはないし、日本政府ももちろん同じである。
電子通信の濫用は、電子通信そのものが使えないような状況をもたらすか、またはオーウェルの記述したようなすべての国民を監視の対象下に置くような世界を作るか、どちらかになる可能性はぬぐえない。スマートフォンユーザはこうした現実を理解しているのだろうか。
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2008.09.26
2010.04.20
トッテン ビル
株式会社アシスト 代表取締役会長
1969年、米国の大手ソフトウェア会社の一社員として市場調査のために初来日し、1972年、パッケージ・ソフトウェア販売会社アシストを設立、代表取締役に就任。2006年、日本に帰化し日本国籍取得。2012年、代表取締役会長に就任。