失敗は成功までの一つの過程であって、その経験知は成功の土台になるので資産である。成功も失敗も資産側に計上すべきプラス価値のものである。では、マイナス価値に置かれるものは……?
───(南風椎訳・講談社文庫より)
これは、「インストラクション・アート(指示する芸術)」と呼ばれる分野のアートです。彼女のこの作品が、ジョン・レノンにおおいにインスパイアを与え、名曲『イマジン』につながっていくという話は有名です。
ちなみに、この本の最後に示されたインストラクションは、
「この本を燃やしなさい。
読み終えたら。」
……そして、本の末尾にはこんな言葉が付記されています。
「This is the greatest book I've ever burned. ───John」
さて本題に戻り、私はこの本に触れて、「ほほー、そうか。人の内にアート作品をこしらえさせるアート作品なんや」と、感心しきりでした。
自分の最終創造物は、人の外に創り出すものではなく、人の内に創り出されるもの。つまり、創造の場は、人の心の内。さらにその創造の主は、自分が半分、それを受けた人が半分。そして出来上がった作品は、その人の内側に留まり、その人のその後に影響を与えていくかもしれない。
消費財というモノ作りが、人の外側に創り出して、人を外側から影響を与えていくのとはまったく正反対のアプローチです。
「モノを通して新しいスタイルを提案すること」に面白みを感じていた私は、次第に、「概念や観念というコトを通して人の内側に何かを響かせてみたい」───そんな気持ちが強くなっていきました。
* * * * *
さて、前置きが長くなりましたが、きょうの概念工作です。
まず、次の問いです。
「成功」の反意語は、はたして「失敗」でしょうか。そんなとき、エジソンのこの言葉はとても重要なことを教えてくれます。
「私は失敗したことがない。
うまくいかない1万通りの方法を見つけたのだ」。
失敗は成功までの一つの過程であって、それによって得た経験知は、成功までの土台になりますから大切な「資産」です。成功によって得る獲得物も、もちろん「資産」。だから、成功も失敗も資産側に計上すべきプラス価値のものです。
では、対置するマイナス価値のものは何か?───それは、「何もしなかったこと」。臆病心か怠慢心から、座してその機会を見送ったことです。
なぜ、私たちは「跳ぶ」(=何か行動で仕掛ける)ことに抵抗があるのでしょうか。それはリスクが怖いからでしょう。しかし、跳ぶことにリスクはもちろんありますが、同時に、跳ばないことにもリスクはあります。
次のページその中に必ず次の行動の「種」が見つかる。
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2009.10.27
2008.09.26
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。