私たちは日々の仕事の中で、手段がいつの間にか目的にすり替わり、袋小路に入っていたということをしばしば経験する。目的と手段をきちんと理解しているか否かは、事の結果に大きく影響する。本稿では改めて目的と手段について考える。
実際のところ、何か事を成すにあたって、目的の代わりに目標を置くことはできます。しかし、この場合、意味が欠如しているので、実行者にとっては「目標疲れ」が生じることがあります。昨今の職場に疲弊感が溜まっているというのは、実は、向かう先に意味を感じていないがための目標疲れであることが要因の1つです。ですから、私たちは目標に意味を加え、目的に変えなければ、強く長く働いていけません。
いずれにせよ、目的は「目標+意味」、この2つの要素がそろってはじめて目的と呼べるようになります。目標なき目的は、単なる理想論・絵空事となるおそれがあります。また、意味なき目的は、単なる割り当て(ノルマ)となるおそれがあります。
ではここで、目的と手段について、先達たちの言葉を拾ってみましょう。
○「知識の大きな目的は、知識そのものではなく、行為である」。
───トマス・ヘンリー・ハクスリー(イギリスの生物学者)
○「私の哲学は技術そのものより、思想が大切だというところにある。
思想を具現化するための手段として技術があり、
また、よき技術のないところからは、よき思想も生まれえない。
人間の幸福を技術によって具現化するという技術者の使命が
私の哲学であり、誇りである」。
───本田宗一郎『私の手が語る』
○「最も満足すべき目的とは、一つの成功から次の成功へと無限に続いて、
決して行き詰ることのない目的である」。
───ラッセル『ラッセル幸福論』
○「組織は、自らのために存在するのではない。組織は手段である。
組織の目的は、人と社会に対する貢献である。
あらゆる組織が、自らの目的とするものを明確にするほど力を持つ」。
───ピーター・F・ドラッカー『断絶の時代』
◆自問リスト
さて、今の自分の仕事の目的と手段について振り返るとどうなるでしょうか。次の問いを自分に投げかけてみてください。
〈Ask Yourself〉
□あなたの今担当している仕事の
・目標は何ですか?
・意味(自分なりに見出した価値・やりがい・理由・使命)は何ですか?
□あなたの今得ている知識や技能は、何を成すためのものですか?
その知識や技能の習得自体が目的になっていませんか?
□今の仕事において、目的は手段を強め、
また同時に手段は目的を強めているでしょうか?
□今の目的の先に、もう一つ大きな目的を想像することができますか?
□あなたの所属している組織(課や部、会社)の事業目的、存在目的は何ですか?
また、それら目的をメンバーで共有していますか?
次のページ【補足:目的と手段の特殊な形】
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【目的と手段を考える】
2011.10.17
2011.10.17
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。