教師は、基本的に「建前」を大切にする職業です。「建前」というと非人間的な感じがあってネガティブにとらえられがちですが、「建前」を外しては「教育」は成り立たないと私は思っています。ただ、生徒のことを真剣に思えば……「本音」を語らなければならない場面もあるんですね!
教育は「建前」の世界です。教育の世界では「建前」がまかり通るということがほとんどです。
政治家が本音ばかり語っていては政治ができないのと同様に教師が本音ばかり語っていては教育はできません。
例えば、「『連立方程式』なんて、実際の生活で役に立つことはほとんどないから無駄だよ」と数学の教師が自分が思う本音を生徒に言ったとしたら、それは教師として失格です。
しかし、ここで我々が考えなければならないことがあります。
教育にはある程度、「建前」がなければ駄目なのですが、その代わり、建前だけだったら誰でも言えるのも真実だということです。実は、このことが生徒へのアプローチを難しくしています。「建前」がまかり通る世界で、しかし、建前と本音を使い分けることが生徒アプローチで重要になってくるのです。
生徒たちは、学業を行う際に、頭と心が乖離してしまうことがしばしばあります。
例えば、頭では宿題をしなければならないと分かっているのだけれども、心の中では、テレビが見たいという状況です。
「頭=理性=建前」、「心=感情=本音」です。頭では勉強する、心ではテレビが見たい、こういう状態を葛藤状態といいます。
このような葛藤状態のときは、当然、勉強が手につきません。教師は、生徒の葛藤状態を理解することが非常に重要です。常に建前ではなく、生徒が葛藤状態のときには、本音に寄り添って、手を差し伸べてやることも大切です。生徒の頭と心を一致させてやるのです。
心を頭に合わせるのではなく、頭を心のほうに合わせてやって下さい。心を中心に捉えるということです。
上記の例でならば、「どうしても見たい番組は何?じゃぁ、その時間は、その番組を見ることを最優先にしよう。楽しんでテレビを見られるように、それまでに宿題をやってしまおう」という感じです。
「絶対にテレビは見ないで宿題をしよう」ということではなく、「どうしても見たい番組は見るようにしよう」ということです。
私が学習塾で教えていたときには、部活で疲れていてどうしようもない生徒には、「よし分かった。今日はもう集中力がないからボーっとしてていいよ。その代わり明日はしっかり勉強しろよ」というようなアプローチも時に行っていました。
建前を控えて、生徒の葛藤状態を極力解消させる、そういうアプローチも先生方には必要です。
先生方は「建前」が通らないと困ると思っている人が多いので、最初はなかなか上手くいかないこともあるでしょう。生徒の頭と心の状況を理解する(共感する)ように努めることから是非始めて下さい。
合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ
中土井鉄信
http://www.management-brain.co.jp/
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2009.10.31
合資会社 マネジメント・ブレイン・アソシエイツ 代表
1961年、神奈川県横浜市生まれ。 現在、合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ代表。 NPO法人 ピースコミュニケーション研究所理事長。