海外に住んでいると「義援金が集まったが、直接送りたいのに日本の送り先が分からない」と言われることがある。「日本人は義援金を喜んでいない」という話も出回っており、適切な情報発信が必要なのだが、海外へ被災地の実情を発信している市民団体は少ないのが実情だ。 [松田雅央,Business Media 誠]
これならば、と神父に相談したが「送り先が個人では……」と納得いかない様子。最後の決め手になったのは被災写真だった。その工房はたまたま Webサイトに壊れた釜や倒れた陳列棚の写真を載せていたため、これをコピーして神父に見せると態度は一変。「これならぜひ!」となった。
コンサートの観客は約30人と思ったほどの客入りはなかったが、計1000ユーロ(約11万7000円)の義援金が集まり驚かされた。中には1人で250ユーロ(約3万円)寄付する人もいて、ドイツ人の気持ちに感謝したものだ。
浮き彫りになる問題
さて、この話から抽出できる問題点は何か。
この工房はWebサイトを運営し被災の様子を自ら発信していたからこそ、義援金を受け取ることができた。例えば津波で建物ごと流されていたなら情報発信さえままならなかったはずで、そういった甚大な被害を受けた被災者をどう拾い上げるかが問題だ。日本国内ならまだしも、海外で入手できる情報は限られ、どうしてもメディアへの露出が大きい大都市へ義援金が集中する。
また、寄付する側は義援金が「どのように使われたか」「何が作られたか」「何を購入したか」という後日情報を欲している。復旧に必死な被災者に対してそれを期待するのは酷だと思うが、これが現実であり、その思いを無視するわけにもいかない。
ここで活躍が期待されるのは被災地の実情を把握しながら活動している市民団体。しかしこれも海外からのニーズには対応しきれていない。
まず外国語、少なくとも英語に対応している市民団体が少ない。Webサイトの英語表記、英語で対応可能なスタッフの用意、海外からの送金方法といった情報は最低限必要だが、組織が小さくなればなるほど難しいだろう。
また前述のケースで求められるような「義援金を送りたい側と受け取る側の橋渡し」を純粋に行う市民団体は少ないように思う。それでは市民団体の活動の自由度が縛られるし、活動経費を差し引くことも難しそうだ。
鍵を握るのは情報発信
逆に日本側から働きかける方法もある。
ドイツだけでも各地に50を下らない日本人会や独日協会があり、かなりの額の義援金が寄せられている。欧州全土ならば200~300団体はあるだろう。その多くで「義援金は集まるが、どこへ送ればいいのか困っている」のが実態だ。義援金を集めている日本の市民団体は、少なくともそういったところへ連絡を取ってほしい。
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