6月1日付日経MJに「フォトブック普及テコ入れ デジカメデータを製本 卒業アルバムに活用提案 写真関連の協議会」という記事が掲載された。その意図と背景を考察してみよう。
自分たちが「売りたい」と思うモノは「ウォンツ」だ。それを消費者が必ず必要としているという保証はない。消費者にあるものは「ニーズ」。理想的な状態と現実のギャップである。「きちんとした卒業アルバムがほしい」のに、「生徒数が少なくコスト高になって作れない」。「少人数でも卒業アルバムを作りたい」というニーズをフォトブックというウォンツが見事に充足させたのだ。
ターゲットを設定するには「5R」という考え方を用いる。Realistic Scale, Rate of Growth, Reach, Rival, Rank & Ripple Effect,という検証ポイントの頭文字6つのRだ。
・Realistic Scale(規模はあるのか?)=少子化の昨今、少人数の学校は多いだろう。
・Rate of Growth(成長性は?)=小学校などは統廃合が進んでいる。今後さらなる少子化で、ターゲットは増すだろう。
・Reach(到達可能か?)=公的な存在である学校のリスト入手は容易だ。ダイレクトメールなどでのアプローチも可能である。
・Rival(競争関係は?)=写真館が活躍できる規模を持った学校は対象にしないのであれば、むしろ経済効率から考えて誰からも相手にされない学校をターゲットに限定するなら、競合は存在しない。
以上の4つのRだけでも狙うに十分な魅力があるが、残りの2つがフォトブックの普及にとって最も魅力的となる要素だ。
・Rank(優先順位は?)& Ripple Effect(波及効果は?)
卒業生家庭にフォトブック製の卒業アルバムが配布されれば、そこからの波及効果も期待できる。その家庭で「へぇ、こんなにきれいに作れるんだ。うちでもやってみよう!」となる。卒業という区切りは次のステップのスタートでもある。そこから撮りためる写真を定期的にフォトブックに出力してもらえるチャンスなのだ。
環境の変化を捉え、消費者のニーズに対応する。マーケティングの基本中の基本であるが、言うは易く行うは難し。しかし、今回のフォトブック普及協議会のニーズ発掘は出色に値するであろう。より多くの児童・生徒の思い出がフォトブックに鮮やかに残されつつ、普及が促進されることを祈る。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。