モノゴトがうまくいっている時。その陰には「成功の理由」が存在している。しかし、それを表面的にとらえず最も有用なポイントを深掘りしていくことが成功のためには欠かせない。
うどんは食べるのに要する時間が極めて短い。筆者がかつて本場・高松に頻繁に出張していた時、店内の客の滞在時間を計ったことがあるが、2分そこそこだった。しかし、同社の設計は、うどんをすすっている時だけを「顧客体験」にしていないのが妙だ。フードコート客のニーズは「手早さ」。ともすれば、他の店で違う料理を買って受け取っている同行者がいれば、待ち時間は気が気ではない。しかし、路面店の来店客にはもう少し余裕がある。同社の特徴は「製麺作業や天ぷらを揚げる作業が“ガラス張り”仕様の店舗レイアウト」にある。それが好循環を生んでいるとある。即ち、「壁をなくした同じ空間を共有することで、従業員とレジ待ち客との間で会話も生まれる」という。
記事には驚異的な数字が掲載されている。「来店客の8~9割」がリピーター。
顧客の顔が見える。声が聴ける。ニーズが直にわかる。そこに同社の最も大きな成功のヒミツが隠されているのだ。同社はセントラルキッチンを持たないだけでなく、「麺の原料となる小麦の仕入れから、おにぎりの製造に至るまで、各店の裁量に任せる」という。店舗毎に来店する顧客のニーズにできるだけ沿うように、各店が工夫を重ねている。それがバリューチェーンで考えれば一見不効率にも思える「脱・集中調理」こそが、成功のカギ(KSF=Key Success Factor)となっているのだ。
大きな環境(マクロ環境)の変化に対応することは生き残りの基本だ。また、競合環境が変化したら、自社の戦略を見直すことも欠かせない。しかし、最も重要なことは、顧客の変化を捉え、そのニーズを深掘りし、充足させるためのしくみを全体の整合性を持って構築することなのだ。
記事には「16年の1000店達成まで突っ走る」とある。顧客の心を捉えて放さない、同社の快進撃は続くだろう。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。