3つの「助ける」~援助・互助・自助

2011.05.01

組織・人材

3つの「助ける」~援助・互助・自助

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

震災後1カ月半が経ち、日本人は見事な「援助」・「互助」の姿を見せた。以降は、私たち一人一人の「自助」が試されることになる。

 被災地外の人間にとって、募金や生活物資提供など外側からの支援はいろいろとできる。しかし同時に、自助という個人の内面の力に関し、いったいどんなことができるのだろう。
 私自身が持っている答えのひとつは「言葉と観念」を差し出すことである。ここでいう言葉は、「がんばろう」「つながろう」といったような励ましの合言葉というより、肚にずしんと据わる観念(やさしく言えば“心持ち”)を含んだ強い言葉のことだ。そうした「強い観念・強い言葉」は、人の内面に「強い力」を生む。例えば、私は苦しいときに次のような言葉で自らを助けてきた。

 ○「悲観主義は気分に属し、楽観主義は意志に属する」。「幸福だから笑うわけではない。むしろ、笑うから幸福なのだと言いたい」。―――アラン『幸福論』(白井健三郎訳、集英社文庫)

 ○「人生の幸福は、困難に出会うことが少ないとか、全くないかということにあるのではなくて、むしろあらゆる困難と戦って輝かしい勝利をおさめることにある。力というものは、弱点にうち勝つ習練から生じるのである」。―――ヒルティ『眠られぬ夜のために』(草間平作訳、岩波文庫)

 ○「高い山の美しさは 深い谷がつくる」。―――加島祥造『LIFE』(PARCO出版)

 ○「(挑むべき苦痛がないとしたら)徳、勇気、強壮、剛毅、果断などをわれわれの間で誰が尊敬するであろうか。人は軽薄の友である歓喜や、快楽や、笑いや、冗談によって幸福なのではない。むしろ、しばしば、悲しみの中にあって、剛毅と不屈によって幸福なのだ」。―――モンテーニュ『エセー』(原二郎訳、岩波文庫)

 他人からの援助はとても有難い。互いが励まし合うことも素晴らしい。しかし問題は、一人家に帰り、一人部屋で考え、一人眠る段になって、一人立ち上がる気力と行動を起こせるかだ。一人っきりになって、結局、意気消沈してしまい、何もできずじまいの日々を送ることは往々にしてある。援助や互助が真に報いられるためには、それが自助と結びつかねばならないのだ。だからこそ、自助が最も大事である。
 その自助の精神を呼び覚ますために、私は強い言葉を送りたい。そして平時から強い観念を教育プログラムを通じて広げていくのが自らの仕事の重大な役目だとも感じている。
 日本が真にこの震災を乗り越えたという証は、経済がもとの状態に戻ったとか、町が再建されたとかいう以上に、日本人の自助の精神が強くなったかどうかにある。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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