各社から「洗えるスーツ」が発売されはじめたのは2009年頃のこと。商品は毎年進化を繰り返し機能アップをしているが、マーケティング戦略も先鋭化をしてきている。その中で、コナカは過去最も厳しいといえる今年の就職戦線を戦う就活生のハートをガッチリつかむ戦略にでた。
ターゲットを明確にするということは、それ以外のターゲットを切り捨てることでもある。便利な洗えるスーツはオジサンも欲しがるかもしれない。しかし、あまりにも「就活」を前面に打ち出しているため、ちょっと手を出しにくくなるからだ。
その反面、就活生のココロにはズバッと響く。スーツのラペル(下襟)のフラワーホールには、就活の「Victory(勝利)」を祈って、Vの字をかたどったバッジを付けているという。ポジショニングとして、「就職活動に勝利するスーツ」を表している。つまり、「就活Vスーツ」は最安値ではないながら、就活生に「洗って一晩で渇く速乾性で2着目がいらない」という「機能的価値」と、「就活がうまくいきそう!」と思える「情緒的価値」を提供しているのである。
「ターゲットを狭めると売れなくなる」などという言葉をよく聞くが、「就活Vスーツ」は<3月末までに年間販売目標の8億円をすでに達成した>(4月27日日経MJ)という。ターゲットを絞って高い購入率を実現するという好例である。
「就活Vスーツ」の戦略はコナカに勝利をもたらした。あとは、それを着用した就活生に、本当に勝利の女神が微笑むことを願ってやまない。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。