表面にまぶされた粉(パウダー)の旨味で絶大な人気を誇る、亀田製菓のせんべい「ハッピーターン」。近年パウダーを増量し続けているが、ついに標準・100%の3倍増し、300%に達した!
では、一度は禁じ手となった別添型商品を再び発売したのか。それは、「機が熟した」という判断ではないかと考えられる。前述の通り、2009年から始まったパウダー増量商品で「濃い味のハッピーターン」の虜にファンが大量に誕生した。その欲求はもはや「他の商品にちょっとかけてみようかな・・・」という悪戯ゴコロを起こすよりも、「もっと濃い味!」を求めている。だとすれば、別添にしても他に用いられる心配はない。一方、パッケージ内の「200%」も通常販売していて、普通に食べても美味しい商品だ。だとすると、さらに「濃い味」を求めるフリークは、1つを200%で食べて、もう1つ購入し別添パック2つを振りかけて「400%」を作り出すという食べ方をするかもしれない。増販効果も期待できるのだ。
パウダー300%の「シャカシャカハッピー」が亀田製菓にとってオイシイのは、増販効果への期待だけではない。通常の200%の製造工程を容器とパッケージングだけを変更することで別商品を作り出せることだ。製造ライン、バリューチェーン(Value Chain=VC)を組み替えるのは時間とコストがかかる。それを最小限に留めることができるのである。また、フリークが「勝手に400%」を作るのではなく、別添パウダーパックを200%分に増量するだけで、「200%+200%相当のハッピーパウダー」という新商品も作れるのだ。
流通チャネルの棚取り合戦や、消費者の関心を喚起するために、ついつい新商品を次々と繰り出しがちな菓子業界のなかで亀田製菓のハッピーターンの戦略は異色だ。ハッピーパウダーで熱狂的ファンを作ったら、それを他社で実現できない自社ならではのセールスポイント、USP(Unique Selling Proposition)として前面に押し出し、最小限の製品仕様変更でファンの期待を高め、囲い込む。その軸がブレていない展開から学べるところを考えてみるのもいいだろう。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。