4月6日付・日経MJ記事に「水筒とコーヒー豆」という珍しい組み合わせの共同販促が取り上げられていた。その意図と効果はどのようなものなのだろうか。
記事のタイトルは「キーコーヒー 水筒のサーモスと販促 水出しコーヒー1500店舗に専用陳列棚」だ。1500店舗とは結構な規模であるが、総合スーパーや食品スーパー、コンビニエンスストアなど流通15社の全国店舗に展開するというから業態も幅広い。キーコーヒーの商品はキーコーヒーの「マイボトルで作ろう!水出しコーヒー」というコーヒー豆というか、ひいた豆をフィルターに入れた「ティーバッグのコーヒー版」。それをサーモスの「真空断熱ケータイマグ」と組み合わせて売るのだ。組み合わせの妙は、水筒に冷水とコーヒーバッグを入れると約2時間でアイスコーヒーが出来上がること。両商品とコーヒーの作り方・飲み方の冊子を組み合わせて展示できる専用什器を作って店頭に陳列するという。
この「水出しコーヒー」の市場はかなりの成長市場のようだ。記事にあるキーコーヒーのコメントによれば、「市場規模は5年前から毎年2桁の伸びで2010年は30%増」だという。今どき30%増とはうらやましい限りだが、確かにその流れはある。エコロジーの高まりを受けて、環境に優しいマイボトルを持ち歩く「水筒男子」が登場。世界的な不況の影響で、お財布にもやさしく水道水を家庭で浄水して持ち歩く「水道男子」も登場した。しかし、やはり水道水では味気ない。「水出しコーヒー」を自分で作って持ち歩けば、カフェに入るよりずっと安く済むというニーズを持った消費者が増えているのだろう。飲料市場で考えれば、缶コーヒーは固定ファンがいるものの、緑茶飲料は「自分で淹れる派」の増加に伴って縮小が続いている。
今回の、コーヒーバッグ+水筒=持ち歩ける水出しコーヒーのような展開を「クロスマーチャンダイジング(Cross Merchandising)」という。商品カテゴリを超えて関連商品を1つの売り場・コーナーに展示することで販売相乗効果を上げる手法だ。食器用洗剤の側にスポンジ。パスタの横にはスパゲッティーソース。買い手の立場に立てば、一度に商品揃って手間もかからず買い忘れも防げる。また、新たな使い方を知ることもできる。
両社はクロスマーチャンダイジングによって「流通業が(消費者からの)値下げ圧力に苦しむなか、コーヒーバックと水筒の組み合わせ販売により販売点数を増やせることや、商品の魅力向上で価格競争になりづらい売り場づくりができる」という提案をするという。
それには各社もウエルカムを示すだろう。売上=客数×客単価である。景気の回復がよちよち歩きのさなかに起きた震災で、消費は再び冷え込むことも予想される。客数を増やすことは容易ではない。しかし、「財布にやさしい」提案ができる組み合わせ商品で客単価を上げることができれば流通各社は乗ってくるに違いない。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。