3月30日付・日本経済新聞に「モスバーガー 新店全て禁煙に 既存店も10年内に転換」との記事が掲載された。高まる嫌煙傾向は、ハンバーガーチェーンからも愛煙家を締め出しに動き出した。しかし、モスバーガーの狙いはどこにあるのだろうか?
記事には書いていないが、完全禁煙化はもう一つの差別化を実現する。対「フレッシュネスバーガー」だ。
フレッシュネスバーガーは1972年創業のモスバーガーより20年も遅い1992年に1号店をオープンしている後発。その戦略はフォロアーの模倣戦略だ。店内装飾はアーリーアメリカン調。ファストフードであるが、注文を受けてから作るスタイルなど、モスのスタイルを巧みになぞっている。しかし、単に模倣しているのではない。さらにコンセプトを徹底しているのだ。例えば、果汁ジュースは店内で果実から手絞りし、ガラスの容器に入れて出されるなど、「手作り感」を高めている。
模倣と徹底だけではなく、差別化要素も持ち込んでいる。例えば、メニューはビールなどのアルコール類を提供し、店内は当初「全面喫煙可」であった。つまり、「オトナの店」としてモスバーガーに差別化も図っていたのだ。しかし、「受動喫煙問題」などもあり、昨今は店内の分煙化が進んでいる。
フレッシュネスバーガーは店舗数約200店。ハンバーガー業界第2位で1400店を持つモスバーガーの地位を脅かす存在だとはいい切れないが、模倣・徹底・差別化の合わせ技を展開するフォロアーとして、うるさい「目の上のたんこぶ」であることは確かだろう。
モスバーガーの「全面禁煙に向けた取り組み」。それは、リーダー企業であるマクドナルドと、フォロアーであるフレッシュネスバーガーに対する差別化施策として1粒で2度オイシイ狙いがあるのである。
但し、「狙いを絞る」ということは「捨てる」ことでもある。いくら店外喫煙スペースを設けても、離反する喫煙客はいる。その離反客より多くの非喫煙客を取り込めるだけの魅力ある店舗やメニューの開発が求められるのも事実である。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。