業績低迷にあえぐカジュアルウェア大手、ジーンズメイトが大きな曲がり角を迎えている。その背景と狙いを読み解いてみよう。
そもそも、ジーンズメイトはなぜに業績が低迷しているのか。
ジーンズメイトはSPA方式をとっていない。旧来の小売り事業である。しかし、それだけが弱点として低業績に直結するとは限らない。ファストファッション勢の一画であり、銀座松坂屋にグッチの後継テナントとして入店、大型店舗「XXI Forever at GINZA by FOREVER 21」を展開したことでも話題になった、「フォエバー21」もSPA方式ではない。「フォエバー21」はマーチャンダイジング(商品政策)、品揃えや店としての統一したイメージづくりによって消費者に魅力を演出し、KBFを提示しているのだ。
業績低迷の原因は、ジーンズメイトが消費者に明確な「KBF(Key Buying Factor=買う理由)」を提示できていないことにある。
例えば、予算が限られた中で服を買おうと思った消費者が「価格の割には品質がいい」という価値を求めるなら、ユニクロに行くだろう。「ファッション性」を求めるなら、ファストファッション店に行く。では、ジーンズメイトはどのような「KBF」で選択されるのか。そのコタエが今まで見えなかった。特に業績が急速に低迷しはじめた2007~08年以降はその傾向が顕著だ。2009年に東京・秋葉原にメイド服の店員が来店客にコーディネートをしてくれる「アキバあそび館」などもオープンさせたが、決定打にはなり得ていない。低迷した状況から大きく舵を切るのが今回の決断である。
3月18日付・日経MJ記事は「ジーンズを主体とするカジュアルウェア衣料店の販売環境は総じて厳しい。大手の一角であるジーンズメイトの主力業態への依存見直しは、同業他社の戦略にも影響しそうだ」と結んでいる。また、2010年5月21日付の記事には、「 “男性の購買はもう伸びないと思った方がいい。ジーンズから脱却し女性客を取り込む”。西脇昌司社長は事業転換への決意を語る」とある。
ユニクロやファストファッションにメインターゲットである若い男性や、サブターゲットのカジュアル志向の女性客を奪われ、価格的にも魅力を喪失して苦戦していたジーンズメイト。もはや、若い頃から習慣的に来店・購買する中年男性が主要購買層となっていたと思われるが、既存路線ではターゲット拡大も、それに対するKBFの提示もできないため、決断したと思われる。SCの集客力と雑貨やワケあり商品で来店ターゲットを拡大することはできるだろう。残された課題は、収益の取れる既存商品とのクロスセリングを図るための、KBF、店舗全体としての魅力を作り上げることができるかにかかっている。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。