セールスとは自社の売りを一方的に話すこと、ではない。むしろ、いかに うまく質問をはさみ、相手に心地よく話してもらうかに極意はある。相手 が気持ちよく話せるように会話を進めるポイントは何だろうか。
まずいちばんに心がけるべきは、聞く(=耳で聞く)のではなく聴く(=
心で聴く)こと。人は誰でも、自分の話を聞いてもらいたいという欲求を
持っている。この欲求は女性の方が強いなどといわれることもあるが、決
してそんなことはない。自分のことばに誰かが真剣に耳を傾けてくれるの
は男女を問わずうれしいことだ。
逆もまた真なり。話を聴いてもらうのは確かにうれしい替わりに、聞きた
くもないことを聞かされることは苦役でしかない。世のセールスパーソン
の多くが誤解し、失敗しているポイントはまさにこの点にある。つまり売
れないのは自分の話し方がマズいのではなく、聴き方にこそ問題があるの
だ。
ただしである。こちらにいくら聴く姿勢があるとはいっても、営業に行っ
た先の相手が、自ら勝手にべらべらとしゃべってくれることなどあり得な
い。もしかしたら「昨日ゴルフに行ってさあ」とか「この間、飲みに行っ
たらね」などといったヨタ話ならしてくれる可能性はあるだろう。相手が
暇でちょうど時間つぶしをしたいと思っているタイミングにうまく訪問す
ることができれば。
残念ながらそのような会話で時間をいくら過ごしても、それをセールスと
は呼べない。その手の他愛もない会話を重ねることでクライアントと親密
な関係を築くことができる可能性を否定はしない。しかし、そんな関係は
クライアントにとってより価値の高い提案をしてくる競合が現れたときに
は、あっという間に崩れ去ってしまうのがオチである。
では、クライアントにどんな話をしてもらえば良いのか。基本的な話の組
み立て方については、以前にもご紹介したSPIN話法こそがベストだと思う。
(SPIN話法については、過去の記事をご参照ください→ http://
www.insightnow.jp/article/364)
ただし、相手も人間である。いくらSPIN話法が効果的だと言っても、あま
りにもビジネスライクに質問だけを突きつけていくと反感を買う恐れ大で
ある。そもそも会話とはキャッチボールなのだ。相手を思いやる気持ちを
込めて球を投げてこそ、キャッチボールはお互いが楽しめるものとなる。
このあたりの感覚は子どもの頃にキャッチボールを楽しんだことがある方
ならわかっていただけるだろう。
では会話のキャッチボールを心地よいものとするためにはどうすればいい
のか。答えは一つ、聞き上手になることである。聞き上手になるためのポ
イントは6つある。聴き手に徹すること、相手の目を見て聴くこと、相づ
ちとうなずきをうまく織り交ぜること、オープンな質問を短く挟むこと、
相手の言葉を繰り返すこと、そして笑顔である。
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