「コラボレーション」流行りだ。そんななか、妙手を繰り出したのがライオンと丸井である。その事例から学んでみたい。
「プレケア」は、サンプルとはいえ、少量ボトルではなく、フルサイズ (250ml入り)の商品をそのままプレゼントする。メーカーにとってフルサイズの商品をそのままプレゼントするというのは勇気がいる。黙っていても購入するかもしれないターゲットの購買機会を自ら奪ってしまうからだ。特に「プレケア」の効果は一度使用すれば実感できるだろう。なのに、フルボトルだと、サンプルを使い切るまで買われることがなくなってしまうからだ。
機会損失を覚悟してもフルボトルをプレゼントするのは、もちろんライオンにとって、ターゲットが「手放せなくなる」まで刷り込むという効果を期待する意味合いもあるだろう。しかし、それ以上に「コラボレーション」としての意味合いが強いはずだ。
ライオンにとって、丸井とのコラボレーションはオイシイといえる。しかし、コラボレーションは双方にメリットがあるフェアな関係でなくてはならない。ありがちなのは、その名の下に、どちらか一方が果実を得てしまうことだ。
その点、ライオンは「フルボトルの提供」によって丸井に対して十分なメリットを創出しているのである。丸井の顧客、特に「洗濯男子」でもあるPB「ビサルノ」のワイシャツ購入見込み客であれば、購入を「どうしようかな・・・」と思っているところを確実に最後の一押しできる。丸井にとっての販促効果が高まるのである。
コラボレーション流行の今日、単独で行うより魅力を増すだろうという狙いや、どちらか一方でも響けばというリスク分散、はたまた販売促進費用を負担し合うコスト低減など様々な思惑が入り乱れて、枯れ木も山の賑わいといった観すら漂う。しかし、コラボレーションとは、「共同作業」であり「共同制作品」を意味する。そこで重要なのは、その原義の通り、双方がメリットを享受できる仕組みになっていることだ。
広告の巨匠の一人であるレスター・ワンダーマンの名言を紹介したい。(ワンダーマンの「売る広告」:翔泳社より)
「“なぜ私に?”に答えなさい。(Answer the Question “Why Should I?”)」
ワンダーマン氏は言う。「とかく企業は自分が売り込みたいものを、売れそうに見える相手、もしくは儲けられそうな相手に売り込もうとする。しかし、顧客は必ず、「なぜ、自分に、その商品を勧めるのか?」を尋ねてくる。自社の利益や思いだけではなく、顧客にとって利益になる商品を、合理的な理由を明確に告げた上でお勧めするべきである。もしそれができないのであれば、それは売り込むべき顧客を間違っているのだ。」
上記はコラボレーションについても同じことがいえる。どちらか一方に利益がある関係は、ターゲット顧客にとっても奇異に映る。効果的な販売促進として実施したいのであれば、共同作業を行う両者と顧客にとって益のある関係を構築することに最も留意すべきである。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。