「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングが、傘下の「ジーユー」で新展開を始めた。その戦略意図と課題はどこにあるのだろうか?
折しもユニクロは「ベーシック回帰」の戦略を強めている。
ユニクロの2010年9月は前年同月比24.7%の大幅減となった。10月8日に記者会見を行った柳井正会長は、「(ユニクロの販売不振の原因は)表面的なファッションを追いすぎた」ことを第1に挙げた。他にも「色やサイズの欠品」という生産面の失敗を指摘し、「天候不順による影響は、それよりも軽微」とした。
つまり、ユニクロはバリューチェーンの最上流である[デザイン]の段階でファッション性を高めるという変更を行った。そして、それに従って[調達・製造]以降のプロセスが組まれた。しかし、[店舗販売・オペレーション]の現場では、例えばユニクロのジーンズ「UJ」は、アイテム数が増えすぎて顧客にはわかりにくく、売れ行きの不振を招く結果となった。
記者会見で柳井会長は「今後は商品構成を見直し、ユニクロに本来期待されているベーシック(基本的)な商品を強化する」と発表した。
ファッション性を高めるジーユーには大きな課題もある。
「商品高回転・売り切り」に最もバリューチェーンを最適化しているのは、外資ファストファッション勢の一画、スペインのインディテックスが展開する「ザラ(ZARA)」だ。200名以上ともいわれるデザイナーを内部に抱え、世界のファッションの潮流をあっという間にキャッチアップして、「現在流行っているものを、作って売る」のである。バリューチェーンの[デザイン]の段階がキモである。そのZARAとも同じ土俵で戦っていくことになったら、ユニクロとは棲み分けができても、強力な競合が存在しているのである。
もちろん、活かすべき強みもある。記事では「外資ファストファッション勢と同様に、一定期間を経た後には大胆な値引き処分をするか、しまむらのようにきめ細かい店舗間移動をするか、いずれかの対策を求められることになりそうだ」と結んでいる。
「店舗間移動」は「しまむら」だけでなく、外資ファストファッション勢「ZARA」も同様に行っている。[店舗販売・オペレーション]の段階において、その店舗内の商品単位での売れ行きを管理し、回転の悪い商品は他店舗の店頭に持っていく。つまり、店頭の品揃えの「鮮度」を保つことで、なるべく値引きをしない、もしくは最小限に留めて売る仕組みを作っているのである。その仕組み構築を前提とすれば、店舗数に勝る「ジーユー」は移動がしやすく有利だといえるだろう。
ジーユーは4月1日に都内初となる旗艦店「ジーユー池袋東口店」を「ユニクロ」との隣接地でオープンさせる。ファーストリテイリングのグループ内で、ユニクロ一枚看板への依存度を軽減し、ポートフォリオを組んで「スター」ブランドに育成する狙いである。そのため、一般の消費者の目には見えないバリューチェーンに磨きをかけて、外資ファストファッションへの挑戦という新たなステージに立ったのである。
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2015.08.26
2015.09.03
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。