大阪商人の基本の基本「始末の精神」を地で行く「アカムラサキの酒かすロール」。ケチではなく始末を重んじる精神が今求められている。
大阪府立大学とイズミヤが、新しいパンを開発し、3月1日から大阪、京都、兵庫などで10万個を限定販売しているという。
このパンは、「アカムラサキの酒かすロール(古代米ロール)」といい、大阪府立大学が古代米のアカムラサキから清酒「なにわの育」を醸造・開発した過程で出た酒かすを有効活用して作られたもので、無駄を出さない、効果的に活用するという、大阪商人の基本の基本「始末の精神」を地で行く商品となった。
関西は、京都や奈良の観光としての盛り上がりはあるものの、経済的には長い間沈滞ムードが漂っている。そんな中で今回大阪から久しぶりに「関西らしい」ニュースだ。
始末の精神とは、かつて井原西鶴が商売を行う上で必要な心得として、「始末」「算用」「才覚」「信用」を紹介したこととして有名だが、今ビジネスを行っていく上で改めて考えなければならない、現代にとって非常に重要な概念であることは間違いない。
「始末」というと、「始末する」「始末におえない」など、一見ネガティブな要素として語られることの多い言葉だが、大辞林によると、「物事の始めと終わり。始めから終わりまでの細かい事情、または成り行き」「ある物事の最終的な状況。特に、よくない結果」「物事の締めくくりをつけること。後片付けをすること」「浪費をしないように気をつけること」とあるように、本来の意味でいくと、『商家の家訓』(徳間書店、吉田豊氏編訳)の中でも、「始末とは、『始』と『末』、すなわち、始めと終わりのことで、『経済活動における一貫した計画性』というのが本来の意味だった」と語られているように、計画と結果を合わせる、計画性と無駄を省く合理性、そして質素と倹約の美学までをさす。
私が昔学生時代京都にいたころは、住んでいたアパートの大家さんから「始末せなあかんえ」とたまに言われたものだ。そのときはあまり意味がよくわからなかったが、今思えば、何事も無駄にせず、きちんと計画通りにやりなさいと言ってくれていたのだろう。
よく関西人は「ケチ」「がめつい」などと揶揄されることも多いが(ただのケチは全国どこにでもいる)、その本質は「始末の精神」にある。
個人が発信するブログだが、材料の使い回しによる調理レシピを紹介するWebサイトが人気を集めているという。コストのかからない材料を集め、おいしくて見た目もよく、しかも栄養のバランスを考え、さらに残った材料はまた別のメニューに生まれ変わるレシピの数々は、写真も美しい。コストの驚きに加えて、作成者の「賢く活用する」美学が満載だ。そこにあるのは、単においしく安くあげるということだけではない、栄養を考え、豊かに生きる工夫ともいえる、まさに始末の精神そのものがある。
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