3月4日付・日経MJフードビジネス面に掲載されている大小いくつの記事。そこから共通する業界としての現状、市場の環境、そして消費者のニーズを読み取ってみよう。
■巨艦を精緻に操縦するコストリーダー
昨年、不採算店を中心に400店を超える店舗を閉鎖したマクドナルド。しかし、依然として約3200店を展開する巨艦であることは変わりない。しかし、この強大な力を持つコストリーダーは、きめ細かさこそが特徴でもある。例えばメニューは低価格、中価格、高価格と各レンジに属するメニューを適度なバランスを持って販促をかけたり、チキンメニューの強化を図りつつ、その集客のために無料コーヒーを展開したりと、愚直に「売上げ=客数×客単価」の最大化を図っている。
そんなマクドナルドのきめ細かさを示す記事。「デザートにマックフルーリー 190円に値下げ・小型化」。300円を35%減量し190円にしたという。マクドナルドはクーポン販促や100円マックなどで「安売り」のイメージを持つ人もいるが、現・原田社長が就任してから単純な値下げは1度として行っていない。今回の値下げも、サイドメニューとしてのクロスセリング(もう1品購入)率向上と、子どものおやつという新たなターゲット、ポジショニング拡大をねらっているのである。
■「もう1品」は並べただけでは売れない!
「注文後に仕上げ ケーキの新商品 ドトール」。ドトールが注文を受けてからブルーベリーソースをかけて仕上げる「ニューヨークチーズケーキブルーベリーソース」をドトールの1120店で展開するという。昨年12月の期間限定販売好評を受けて本格展開という運びになったようだ。カフェにスイーツが当り前に置いてある昨今、従来の作り置きしただけの商品では顧客は魅力を感じず、「もう1品」と手を伸ばすKBF(購買理由)になり得ないということだ。
日経MJの記事を眺めて見えてきたことは、薄明かりの見え始めた景気のなか、フードビジネスも必死で需要を増そうとしている姿だ。厳しい業界ほど、生き残りに知恵を絞る。特に、日本という縮小市場では、従来のように「消費者」という一律、大括りのターゲットでは売れない。支持を得られない。どこの、誰がどんなニーズを持っているのか。細分化し、そのKBFになる提案をし、ポジショニングを明確にすること。その実現に向けたしくみを組み上げることが生き残りの条件だということを示している。他業態も学ぶところは大きい。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。