人の成長過程を加藤清史郎センセイの法則と、野村克也カントクの名言から考えてみる。
◆【段階2】「賞賛」によって試される
いまはネットでの情報発信、情報交換が発達している時代ですから、仕事の世界でも、趣味の世界でも、「シンデレラボーイ/ガール」があちこちに誕生します。ネットの口コミで話題になったラーメン屋が一躍「時の店」になることは頻繁ですし、「You Tube」でネタ芸を披露した人(ペット動物さえも)が、1週間後にはテレビに出演し、人生のコースが大きく変わることはよくある話です。人生のいろいろな場面で、こうした「賞賛」という名の“持ち上げ”が起こります。
「賞賛」は、受けないよりは受けたほうがいいに決まっているのですが、これもひとつの試練です。 「賞賛」によって、人は「謙虚さ」を試されます。芸能人ではよく目にすることですが、賞賛によってテング(天狗)になってしまい、その後人生を持ち崩してしまう人がいます。賞賛は、わがままを引き出し、高慢さを増長させるはたらきがあるからです。
このことを古くから仏法では「八風におかされるな」と教えてきました。「八風」とは、『ウィキペディア』の説明によれば、仏道修行を妨げる8つの要素で、「利・誉・称・楽・衰・毀・譏・苦」をいいます。
このうち前半4つは四順(しじゅん)と呼ばれ、
・「利い」 (うるおい):目先の利益
・「誉れ」 (ほまれ):名誉をうける
・「称え」 (たたえ):称賛される
・「楽しみ」 (たのしみ):様々な楽しみ
で、どちらかというとポジティブな要素です。まさに称賛という試しは、この四順の中にあります。
ちなみに後半の4つは四違(しい)と呼ばれ、
・「衰え」 (おとろえ):肉体的な衰え、金銭・物の損失
・「毀れ」 (やぶれ):不名誉を受ける
・「譏り」 (そしり):中傷される
・「苦しみ」 (くるしみ):様々な苦しみ
といったネガティブな要素になります。これらは次の試しの段階にかかってきます。
◆【段階3】「非難」によって試される〉
野村さんが3番目にあげる試練は「非難」です。そう、世の中は「上げておいて、落とす」ことがあるわけですから。その人のやっていることが大きくなればなるほど、妬む人間が増えたり、脅威を感じる人間が増えたりして、いろいろなところから非難や中傷、批判、謀略が降りかかってきます。
野村さんは「賞賛されている間はプロじゃない。周りから非難ごうごう浴びるようになってこそプロだ」と言います。
自分を落としにかかる力を撥ね除けて、しぶとく高さを維持できるか、ここが一流になれるか否かの重大な分岐点になるでしょう。この分岐点は、いわば篩(ふるい)と言ってもいいものです。この篩は、その人の技量や才覚によって一流か否かの選別を行うのではなく、その人が抱く信念の強さによって選別を行います。結局、自分のやっていることに「覚悟」のある人が、非難に負けない人です。
芸術家として思想家として政治家として、生涯、数多くの非難中傷を受けたゲーテは言います――― 「批評に対して自分を防衛することはできない。これを物ともせずに行動すべきである。そうすれば、次第に批評も気にならなくなる」。 (『ゲーテ格言集』高橋健二訳より)
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2009.10.27
2008.09.26
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。