GAPの新たな動きといえば、何といっても本日、3月3日に東京・銀座数寄屋橋近くの一等地に国内最大の売り場面積を持つ旗艦店を開店することだ。さらに3月2日付・日本経済新聞によると「米ギャップ 日本でも低価格店」と傘下の低価格ブランドを、日本市場で展開する可能性を日本法人・ギャップジャパンの社長がコメントした。その狙いと背景を考察してみよう。
GAPは1995年に日本に進出し、現在約130の店舗を展開している。GAPブランドはアメリカンカジュアルの代名詞ともいえるポジションを獲得しているが、業容としての特徴は、今日、ユニクロをはじめ外資系ファストファッション勢も取り入れている「SPA(Specialty store retailer of Private label Apparel)」という製造から小売までの垂直統合した方式を1986年に提唱し展開したことである。
華々しい銀座の新旗艦店の開店。しかし、筆者にとってその船出は「満を持して」というよりは、「反転攻勢」をかけて総力戦の火蓋を切ったというように映った。ファーストリテイリングが展開するユニクロの躍進や、スウェーデンの「H&M」、スペインの「ZARA」などと共にわき起こった「ファストファッションブーム」の陰に隠れるようになってしまっているからだ。SPAというSCM(Supply Chain Management)における優位性はなくなっているといえる。
SPAという同じ土俵に立った時、生き残るカギは「顧客の支持をいかに得るか」である。
「バリューライン」という考え方がある。横軸に製品・サービスの「価格」、縦軸に「価値」の二軸を取る。すると、価格と価値が比例した関係が出来上がる。これがバリューラインだ。消費者は市場価値と自らに提供される価値の相関で、価格を判断している。このバリューラインのどのポジションで消費者にアピールするかをまず考える。
「安くてそれなりの価値のもの(エコノミー戦略)」「そこそこの価格で、ほぼ妥当な価値のもの(中価値戦略)」「高くて価値の高いもの(プレミアム戦略)」という。当然、バリューラインを下回る、例えば「中間的な価格で価値が低い」ものは、市場から撤退を余儀なくされる。しかし、バリューラインを上回るものは、消費者の支持がさらに高まることになる。例えば「低価格なのに中間価格と同等の価値のもの(グッドバリュー戦略)」「中価格なのに価値の高いもの(高価値戦略)」「低価格なのに高価格のものと同等の価値のもの(スーパーバリュー戦略)」という存在になる。
ユニクロやファストファッションが目指したものは、SPAによって価格低減を図った上で、品質やファッション性という価値を高めてバリューラインを超えることだ。言い換えれば、いわゆる「ファストファッション戦争」といわれる戦いは、バリューラインの上空で展開されている戦いなのである。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。