この10年ほど、マーケティングにおける'キーワード'としてずっと頭に引っかかっているのが、「コンテクスト(文脈)」という言葉です。
『キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる』(佐々木俊尚著、ちくま新書)には、次のような一節があります。
“
情報のノイズの海の中から、特定のコンテキストを付与することによって新たな情報を生み出すという存在。それがキューレーター。
あるアメリカ人のブロガーは、「コンテンツが王だった時代は終わった。いまやキューレションが王だ」と書きました。
一次情報を発信することよりも、その情報が持つ意味、その情報が持つ可能性、その情報が持つ「あなただけにとっての価値」、そういうコンテキストを付与できる存在の方が重要性を増してきているということなのです。
”
これはどういうことだかおわかりになりますか?私なりにできるだけわかりやすく説明してみたいと思います。
最初から特定個人に向けられた情報は別として、マスメディアやネットにあふれている情報のほとんどは、基本的に「万人向け」の一般的な情報です。キュレーターは、そうした情報を適宜組み合わせたり、背景となる情報や一定の解釈を行なうこと、すなわち、独自の「コンテキスト(文脈)」を付与することによって、情報に「特定の価値」を生み出す作業を行なうのです。
この「特定の価値」は、もはや万人向けではないかもしれません。しかし、ある特定のセグメントの人々にとっては、極めて高い価値のある情報となります。すなわち、「あなただけにっての価値」になるというわけ。
そもそも、情報は、コンテキスト(文脈)次第でいかようにでも解釈できるものです。例えば、いわゆる「いいね!」という短い言葉ひとつとっても、
・誰に対して
・どんな発言に対して
・どんな背景や空気の中で
付けられたかよって、本来の「ポジティブな承認」であることも、逆の「ネガティブな皮肉」にもなりえますよね。
ですから、なんらかの「マーケティング・コミュニケーション」を行おうとする際にも、こちら側が送出したい「メッセージ」に加えて、そのメッセージを取り巻く「コンテキスト」にも十分に気を配らなければならないのです。なぜなら、そうしたメッセージが受け手にどのように解釈されるかは、「コンテキスト」に大きな影響を受けるからです。
近年は、メッセージを出す前に、「コンテクスト」を積極的に生み出すことから取り組む施策も増えてきています。これは『新版 戦略PR 空気をつくる。世論で売る。』(本田哲也著、アスキー新書)で解説されている「空気をつくる」ということだと言えるでしょう。
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2012.10.24
2012.12.10
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。