何かに挑戦しようとするとき、能力が足りない、資金がない、環境が悪い、といった物理的な壁があってできないと思われる状況はしばしば起こる。しかし最もそれを阻んでいる壁は、実は自分の内につくってしまう精神的な壁である。
さて、私たちはもちろんそうした沼で大切なキャリア・人生を送りたくはない。だからこそ、常に未知の挑戦世界へと目をやり、大小の壁を越えていくことを習慣化する必要がある。
しかし誰しも、松坂選手のように「なめてかかれる」ほど自信や度胸があるわけではない。―――ではどうすればいいか。
その一番の答えは、坂の上に太陽を昇らせることだ。「坂の上の太陽」とは、大いなる目的、夢、志といった自分が献身できる“意味・大義”である。この太陽の光が強ければ強いほど、高ければ高いほど、目の前に現れる壁は低く見える。と同時に、太陽は未知の世界で遭遇する数々の難所も明るく照らしてくれるだろう。
最後に、フランスの哲学者アラン『幸福論』(白井健三郎訳、集英社文庫)からいくつか言葉を拾ってみる―――
・「人間は、意欲し創造することによってのみ幸福である」。
・「予見できない新しい材料にもとづいて、すみやかに或る行動を描き、そしてただちにそれを実行すること、それは人生を申し分なく満たすことである」。
・「ほんとうの計画は仕事の上にしか成長しない。ミケランジェロは、すべての人物を頭のなかにいだいてから、描きはじめたのだなどと、わたしは夢にも考えない。(中略)ただもっぱらかれは描きはじめたのだ。すると、人物の姿が浮かんできたのである」。
・「はっきり目ざめた思考は、すでにそれ自体が心を落ち着かせるものである。(中略)わたしたちはなにもしないでいると、たちまち、ひとりでに不幸をつくることになる」。
―――跳ぶことはリスクである。跳ばないことはもっとリスクである。さて、あなたはどちらのリスクを選ぶか? (続く)
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壁を乗り越える~なめてかかって真剣にやる
2011.02.26
2011.02.24
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。