小売業や外食などをはじめ、様々な異業種コラボレーション店舗の展開が盛んだ。その背景と成功のカギを考えてみよう。
■成功するコラボレーションのパターン
上記の通り、コラボレーションによるコスト低減効果だけでなく、売上げを増し利益も創出するためには、両店が以下のようなパターンであることが望ましいといえる。
A店=身近で利用頻度の高い商品を扱っている店(反面、「身近さ」が低ければそこで買わなくてもいい)
B店=希少性のある商品を扱っている店(反面、「希少性」が低ければわざわざ買いに行かない)
つまり、AB両店は単独で本来の強みである「身近さ」「希少性」で勝負できるのであれば、コラボレーションする必要はないのだが、「縮む市場」においては、「身近さ」や「希少性」を感じてくれる消費者自体が減少し、競合他社との取り合いが激しくなっている。そのために、「1+1を2以上にする」こと、つまり併設、コラボレーションをするのである。
■「カラオケ店+ケーキ店」という事例
2月21日付日経MJに「郊外カラオケ店 ケーキ店を併設」という記事が掲載された。カラオケ「ビッグエコー」を運営する第一興商が、「シャトレーゼ」とFC契約を結び、まず、三鷹の店舗1階部分の有休スペースを活用するということだ。
「利益=売上-コスト」という原則で考えれば、受付・待合スペースなど以外の機能を有しないカラオケボックスにおける1階部分を有効活用できるということは、店舗効率を上げることができる。コスト低減と売上げアップである。
「1+1を2以上にする」という考え方では、A店=身近で利用頻度の高い商品を扱っている店(反面、「身近さ」が低ければそこで買わなくてもいい)=カラオケ・ビッグエコーとなるだろう。身近ではあるが、カラオケの利用客は減少しており、カラオケボックス業界全体の客室総数も減少している。B店=希少性のある商品を扱っている店(反面、「希少性」が低ければわざわざ買いに行かない)=ケーキ・シャトレーゼとなる。シャトレーゼはFCで全国500店を展開し、ポイントカード会員500万人を有する。スイーツブームの昨今、利用機会のポテンシャルは高いと思われるが、「希少性」は高くないといえるだろう。
記事からは、ケーキ店部分に飲食スペースは設けないという。そして、ケーキ購入客の「カラオケついで利用」と、カラオケ客の利用後のお土産「ついで買い」利用を狙っていると読み取れる。つまり、両店併設によって、来店客数・利用率を高め、ケーキとカラオケの「クロスセリング(購買機会増)」、カラオケにケーキを「アップセリング(購買金額・店数増)」という客単価を高める戦略である。
市場縮小という決定づけられた未来。しかし、座して死を待つわけにはいかない。生き残りをかけたコラボボレーションは様々な業種で今後、模索、展開されることになるだろう。その際は、人間関係とも同じように、お互いの特性を十分見極めることが欠かせない。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。