「獲物を釣り上げたい」と思ったら、あなたはどんな手を使うだろうか。普通の釣り方で辛抱強く待つか、獲物が食いつきそうなエサを使うか、それとも釣りではなく一網打尽を狙うか・・・。
昨今のマクドナルドの釣りエサは「コーヒー」だ。評判の悪かったコーヒーの味をプレミアム化して市場の評価を得た。120円としてはコストパフォーマンスがよいと、オリコンの調査による「買いたいコーヒー」ではホット、アイスとも1位を獲得している。つまり、「グッドバリュー戦略」のポジションにあるわけだ。
さらに外部環境が変わった。新興国需要の高まりなどを背景とした、コーヒー豆の値上がりだ。コーヒーチェーンなどはついに吸収しきれずに、価格転嫁を開始する。スターバックスの価格改定は2月15日から。販売数の多いショートサイズを値上げし、優良固定ファン向けの大きなサイズを値下げする調整である。それに対し、マクドナルドは「値上げせず」の宣言を原田社長自らが行っている。(マクドナルド原田社長が制服姿で接客 コーヒー価格は「企業努力で吸収」:2月14日オリコン)
また、二の矢も忘れてはいない。「コーヒー9品目2800店に拡大 マクドナルド社長(2月15日日本経済新聞)」。「マックカフェ」の名称で「カフェラテ」などコーヒーメニュー全9品目を扱う店は全国1800店。コーヒー専業チェーンより2~3割安い価格が消費者の支持を得ているため、2011年中に2800店まで拡大するという。同時に、コーヒーの2杯目を無料とするキャンペーンを20日まで展開する。
上記のオリコンの記事にある原田社長のコメントが注目に値する。「コーヒー豆の国際価格高騰について「他社と同様にインパクトを受けている」と実情を明かしつつ、「でもうちはハンバーガー屋。(現状の価格なら)企業努力で吸収できる。今後もコーヒーに力を入れてやっていきたい」と力強く語った」という。さらに、現状について「コーヒー単独で(のビジネス)は厳しいと思う」。しかしコーヒーを目的とした顧客の来店頻度の多さ、コーヒーをきっかけにしたバーガー類の購入等に触れ、「コーヒーのビジネスは大事。3月末から4月にもコーヒーのキャンペーンを打ち出していきたい」とした」という。
記事にさらっと書かれている「なお、同社の売上のうちコーヒーは3分の1を占めているという」という記述が極めて重要だ。原田社長のコメントにあるように、コーヒーでは利益は出ていないが、その売上げが3分の1までを占めている。さらに、無料コーヒーやお代わり無料のキャンペーンを展開して、客数を増やし、本業のハンバーガー類を販売するという戦略なのである。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。