「さて、まず環境分析から考えてみようか」と、会議やブレストの際に最もよく使われるフレームワークの一つに「SWOT分析」がある。しかし、それを使用すること自体に大きな問題点が隠されているのである。その脅威をここで警告し、「使えるSWOT」にするための対応策を記していこう。
SWTO分析最大の脅威とは、分析を誤り、その誤った分析結果自体が一人歩きすることだ。ミスリードした分析結果に後から振り回される悲喜劇。是非とも避けたいところである。
「SWOT分析」は自社を取りまく「外部環境」と自社内の「内部要因」を、S = Strong(強み)、S = Weakness(弱み)、O = Opportunity(機会)、T = Threat(脅威)に分類し、自社にとっての「市場機会」と「事業課題」を明らかにして戦略の方向性を導き出すフレームワークだ。
では、あるモノゴトを目の前にして、あなたはそれを「ネガティブ」にとらえるだろうか、「ポジティブ」にとらえるだろうか。
「グラスに入っているワインを見て“ああ、もう半分しか残っていない”と嘆くのが悲観主義者。“おお、まだ半分も残っている”と喜ぶのが楽観主義者である」。
イギリスの劇作家、ジョージ・バーナード・ショー(George Bernard Shaw:1856~1950)の言葉である。
あなたが悲観主義者か楽観主義者かはわからない。しかし、モノゴトは概してどちらの解釈も成立する。同じものごとでも、一面からだけ見ると大きく解釈は異なる。それ故、両面を見ることによって正しい解釈を行なわなければならないのである。
「SWOT分析」の問題点は、実はそのフレームワークの構造にある。
目の前のモノゴトに対して、「これはS(強み)」「これはW(弱み)」などと二分していく。「この子はいい子」「この子は悪い子」などとレッテルを貼っていくようなものだ。たまったものではない。一人の子ども、一つの行いも多面的にとらえれば良い面も悪い面もある。その両面をとらえ、明らかにしていくことが大切なのだ。
もう一つは、会議やブレストで出てきた意見を「解釈」せずにフレームに落とし込んでしまう構造的な問題点が存在することだ。
例えば、「当社には店舗がたくさんある」という意見が出たら、それはSWOTのどこに分類すればいいのだろうか。多くの場合、「強み」に分類するだろう。では、それはなぜ、「強み」なのか。
「店がたくさんある」から、「顧客接点がたくさん存在する」ことになり、「販売機会を逃さない」という“解釈”をすれば初めて「強み」という意味合いが出てくる。
会議の論点がコストに関わることであれば、おそらくそれは「弱み」に分類されるだろう。それも“解釈”することによって、「店がたくさんある」から、「店舗の地代家賃と人件費という維持コストがかかる」ことになり、「高コスト体質につながる」という「弱み」の意味合いが明確化できるのだ。
内部要因の「強み・弱み」について言及してきたが、外部環境の「機会・脅威」に関しても同様であると理解されたい。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。