私たちは、あまりにビジネス社会からくる効率・実用・功利主義の影響を受けていて、曖昧さを避け、揺らぎを嫌い、具体・客観・論理を奨励する。しかし、これはあくまで一方向への視点に過ぎない。
そんなところから、きょうは、曖昧に考えることを肯定する記事である。そして、世の中あげて具体的に形式化して考えることをよしとする趨勢が、実は私たちの思考力を弱くしている現状を見つめ直す記事でもある。
◆「ソリッド思考」と「ファジー思考」
さて、本記事では、人間の思考を「ソリッド思考」と「ファジー思考」の2つに分けて考える。
「ソリッド思考」とは、次のような要素を特徴とする。
・solid=固形の・硬い・実線の
・具体的に、定義して、明示して、形式化するように考えること
・関連語:tangible(触れられる)、explicit(系統立てられた)、
logical(論理にかなった)、description(記述)
他方、「ファジー思考」とは、次のような要素を特徴とする。
・fuzzy=ぼやけた・曖昧な・不明瞭な
・抽象的に、輪郭を描かず、暗示して、示唆化するように考えること
・関連語:intangible(触れられない)、tacit(暗黙の)、
intuitional(直観の)、metaphor(比喩)
「ソリッド思考/ファジー思考」という軸に加え、もう1軸「中身が詰まった思考/中身の詰まっていない思考」を加えると下図になる。私たちはこの4象限をうろちょろしながら物事を考える。
上の4象限の説明を簡単にしておくと、ソリッド思考の陽面である「ダイヤモンドの彫刻刀」は、クリスタルクリアな明晰さで物事を鮮明に切り出し、造形することのできる思考である。
逆に陰面である「糸吊り人形」は、具体的・形式的に考えようとするのだが、実際は他人の受け売りや流行の方法を真似るだけで、思考が自分のものになっておらず、ギスギスとやせている状態をいう。頭でっかちで目がぎょろっとしていて、身体は骨ばった恰好、しかも実際は自分で動くのではなく、人から操られてぎこちなく動くだけという糸吊り人形から想起している。
他方、ファジー思考の陽面「濃厚な滋養スープ」は、どろどろと知識やら智慧やら洞察やら悟りやらが混然一体となり、形のない液状として柔軟に豊かな思考がなされていくことを言い表している。
また、陰面の「霧の中のボート」は、何をどう見てよいか、どう進んでよいかがわからずにプカプカと漂流している小船、そのような思考状態を想像していただければよいだろう。
◆「ソリッド」と「ファジー」のコミュニケーションモデル
さて、私たちは外界・他者から情報をさまざまに受信して思考を行う。その際にコミュニケーションが発生するわけだが、その原理を表したのが下図だ(J.B.ベンジャミン著『コミュニケーション』二瓶社からヒントを得て筆者が独自に作成)。
次のページむしろ直接目に見えない多くのことを感じ、それを伝えたい...
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【ソリッド思考・ファジー思考】
2011.02.03
2011.02.03
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。