イノベーティブな商品・サービスを世に送り出し、一気に「キャズム越え」を狙いたい。誰しも考えることではあるが、なかなかそれは、ままならぬ。では、2011年をどのように戦えばいいのだろうか。
■「エコ」なコピー機の戦略は?
コモデティー品といえば、オフィスでは「コピー機」がその代表格だ。「複写ができる」という中核は当たり前で、今日のオフィスで稼働しているのは、ファックスもプリントアウトも、スキャンもできる「複合機」になっている。それを実現する実体も、速さ、キレイさ、節電機能などはもはや当たり前。勝負のしどころは、サービス・メンテナンスのよさに移っている。しかし、サービスレベルの向上には限界があり、人が動く部分であるためコストも幾何級数的に高くなっていく。
同紙14面の「日進月歩の技術革新」という記事では、「事務機 機能毎に通電制御」というタイトルがある。商品写真には「機能別に通電制御が可能な富士ゼロックスの複合機」という説明が添えられている。つまり、前項の高級コンパクトデジカメ同様に、「節電機能」という実体価値を再定義したわけだ。背景にはエコロジーの高まりと、企業のコスト低減化という市場環境がある。富士ゼロックスの「アペオスポート」は従来機が節電/解除を機械全体で行っていたものを、機能毎に4分類した結果大幅に節電解除時間を短くし、消費電力を約7割削減できるという。
エコとコスト削減のため、節電機能はもはや当たり前。しかし、機械がウォームアップするまでの時間は何ともイライラする。しかし、ユーザーはそれが「当たり前」と思って我慢してしまうようになる。結果的に、トラブル時の対応スピードなどに目が行く。その「当たり前」になってしまっているものを、見直し、細部まで分解して価値を高める工夫には学びたい。
■「当たり前」から「引き算」して生まれたLCC
「当たり前」と思いがちなものを見直すには、一度自社のバリューチェーンを「引き算」してみることも有効だ。元旦の日経記事にもあちこちにキーワードとして頻出していたLCC(格安航空会社)。昨年、全日空が参入を決め、中国の春秋航空が茨城空港に就航、マレーシアのエア・アジアXが羽田空港に就航して話題になった。通常の航空会社が客室内のサービスを「フルサービス」で提供するのに対し、徹底した省略を行う。
機内サービスだけではない。[調達]→[販売]→[運行]→[サービス]という、航空会社のバリューチェーンの細部にわたって見直し、「高効率化のための引き算」を行っている。まず、調達機体は統一。顧客ニーズや路線に応じた機体の多様性は引き算だ。その結果、調達条件交の有利さや、全路線での使い回による運行効率や、メンテナンスも効率化えきる。航空券の販売はウェブサイトでの予約を中心として中間マージンを引き算だ。運行は機体にできるだけ多くの客席を作って、低廉な価格で客を集めて搭乗率を高め、高回転で機体を回していくという運行が基本となっている。
上記のような航空会社は、以前なら誰しも考えも付かなかったが、米・サウスウエスト空港やアイルランドのライアンエアーが確立したモデルは国際的にはすっかり定着化して、今、日本市場にも変革をもたらそうとしている。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。